花研コーヒーブレイク
日本の花き装飾技術
2018.10.01
今年の並々ならぬ災害の多さと大きさは、もうなんたることでしょう。
被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
お取引先のみなさま、農家のみなさまの身の安全を心よりお祈り申し上げます。
大田市場の周辺でも、照葉樹の太い枝が引きちぎられたかのように切り飛ばされ、歩道を全面通行止めにしていたり、コウヤマキの主幹からなぎ倒されていたり、ガラスの破片が飛び散っていたりと、夜中に大変な台風が過ぎ去ったことが伝わる惨憺たる光景を目にしました。そうそう、銀杏の実もぼとぼと落ちていました。拾いたい衝動を抑え、道草せずにまっすぐ会社に向かいましたが、結構自制心を働かせました。
さて、週末は全国的人気女優の樹木希林さんのご葬儀が行われました。
ついこの前までお元気でいらして、ガンであることをテレビで伝えていた時でさえも、信じられないくらい元気なお姿だったのに、本当に残念な限りです。率直で飾らないキャラクターが皆に愛されていたように思います。
祭壇はこの通り本当に美しく、樹木さんの優しさと気品を感じる素晴らしいものでした。
遺影はふんわりとカスミソウで女性らしく、優しい雰囲気に包まれ、コチョウランをアクセントにし、また祭壇の中央部分は輪菊で波を描き、樹木さんの気丈さを演出されているように感じました。
アタクシ自身が参列した葬儀で、その印象から個人的な意見を申し上げれば、輪菊だけの場合は、凛として、秀麗な感じが演出され、男性的な雰囲気が強くなります（個人的な印象に過ぎませんが）。そこにカスミソウを効果的に使い、樹木さんの女性らしさや多くの人に愛される柔和さが感じられるのかなと思いながら拝見していました。
入口には、遺影のほかに若い時のお写真が飾られ、輪菊、コチョウランのほかに、ムーンダスト（と思しき濃淡の紫色の花）が飾られ、お見送りする寂しさの中にも彩が添えられていました。
輪菊の開花状況を見極め、点（輪菊の頭）で線を作り、面を作り、また立体的に仕上げていく技術。また、ご本人のキャラクターや存在を考えながら「その人らしさ」を演出し、また喪主様のご意向も反映しながら祭壇を作り上げるのは大変なお仕事ですね。他の国ではなかなか持ちえない、日本ならではの素晴らしい技術と思います。
