「香りの提案」大田花き花の生活研究所

※本ページの情報は 2006 年時点のものです。花きの香りについては文化的情報としてみなさまにご参照いただきたく、ここに調査結果をご紹介いたしますが、弊社では香りの調査事業は終了いたしました。本内容のお問い合わせにつきましては、対応いたしかねます旨、予めご了承くださいませ。

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キク

Category: 草花類

キクについて

キクの原産地は中国で、栽培は2500年以上の歴史があるといわれております。日本には、平安時代には伝わっており薬草や観賞用植物として定着しました。江戸時代には育種が盛んに行われ、新しいタイプの菊が各地で生まれました。当時開発されたキクは今でも各地に残っております。現代の市場で流通する切り花用の菊は輪菊・スプレーギク・小菊という三タイプが中心となっていますが、最近は江戸時代の品種を交配親にした品種も出回るようになりました。そのような品種は古典菊、もしくはクラシックマムと呼ばれ再び注目を集めています。

キクの香りとは

弊社では、100種以上の市場流通品種を調査し、香りの強い一部品種において成分分析行いました。

その結果、菊の香りは樟脳の香りの「カンファー」や、墨をすったときに感じられる香り「ボルネオール」と呼ばれる特徴的な成分によって構成されていることが分かりました。また、菊は開花ステージによって香りが異なる特徴を持っています。開花が進むと香りが悪くなる理由は、花粉が発酵することにより低級脂肪酸やボルニアセテートが出てくるためだと考えられます。

2008年11月キリンアグリバイオ株式会社花き商品開発センターにて

香り技術顧問 蓬田氏による菊(市場流通品種)の香り調査を行いました。

キクの香りの楽しみ方

花弁が密集しているピンポンタイプ、デコラタイプの菊の中には、前述のカンファーやボルネオールの香りによって芳香性の高い品種が見られましたが、筒状花がむき出しになっているデイジータイプは花粉の香りの影響を受けやすいためか、全体的に芳香性が低い傾向にあることが分かりました。

芳香性の高い流通品種の一部を以下にご紹介します。

※以下は2007~2008年の調査時に確認出来た品種ですので、2010年現在の市場入荷情報については、㈱大田花きへ別途お問い合わせください。

  

 「スーパーピンポン」         「ゴールデンピンポン」        「グリーンピンポン」   

「セイチロ」               「セイピアジェピンク」          「セイピアジェホワイト」   

「キャンドール」(SP菊)        「セイオペラパール」         「アナスタシア」シリーズ

菊が仏花として使われるのは、菊とお線香の香りが良く合うことも理由のひとつではないかという説があります。菊の香りと、その他の花の香りの組み合わせに関しては、以下にご紹介します。

菊に含まれるカンファーの香り成分はローズマリーや針葉樹の葉にも含まれるため、これらの花材とは香りの相性が良いようです。またグリーン、ハーバル系の香りが特徴的なシャクヤクとは、香りが調和し易いおすすめの組み合わせです。是非、ブーケやアレンジメントで香りのデザインを試みてみてはいかがでしょうか。   

シャクヤク「ユニバースター」      「ローズマリー」           「ひむろ杉」

キンギョソウ

Category: 草花類

キンギョソウについて

キンギョソウは温暖な北半球に分布し、日本へは江戸時代後半に渡来しました。花が金魚のおちょぼ口に似ているところからキンギョソウと名付けられました。花型は、一般的な金魚型をしたものと、ペンステモン咲き(釣鐘型)というタイプが主流です。市場における流通期間は10月~4月、ピークは3月です。豊富な花色と芳香性の高さ、エディブルフラワーとしての評価が高く、嗅覚と味覚の両方に訴えかけることの出来る数少ない花のひとつと言えます。

キンギョソウの香りとは

キンギョソウは古くから香りの強い花として知られていたようです。ドイツでは古来から「においの強い草は魔除けになる」と信じられておりキンギョソウを家の入り口や家畜小屋に下げて魔除けのお守りにしていました。現在切花として流通のあるキンギョソウの香りは、青葉の香りを思わせるグリーンの香りを基調とした、フローラルな香りが特徴です。

キンギョソウの香りのタイプ分類

キンギョソウの香りは香りの特徴と香り成分の配合バランスによって3タイプに分類され、以下の香り表記はセリ機、インターネット受発注システムに掲載されています。

※香りの強さは3段階で表記されています。

①フルーティの香り(表記:F)
イランイランの花と果物を思わせるフルーティな甘い香り。イランイランの香りの「メチルベンゾエイト」「メチルシンナメイト」、バラの香りにも含まれる「ゲラニアール」「3.5ジメトキシトルエン」、フルーティな柑橘系の香りの「デカナール」などを含みます。

②キンギョソウの香り(表記:K)
多くの金魚草に見られるフローラルグリーン調の軽い香り。
フローラルな香りの「リナロール」「ネロリドール」、グリーンな香りの「オシメン」「ミルセン」などを含む爽やかな香りが特徴です。

③グリーンの香り(表記:G)
グリーン調のやや青臭い香りが特徴。芳香性は上記の2タイプと比べるとやや劣る傾向にありますが、近年の品種改良によって、ほとんど香りを持たなくなった品種に見られる香りです。
グリーンな香りの「オシメン」「ミルセン」を主に含みます。

スイートピーの芳香品種(切花流通品種)の詳細は、花情報提供サービス
「ここほれわんわん」からご覧いただけます。是非ご参考ください。

キンギョソウの香りの活用法

弊社が行った成分分析から、キンギョソウの香りに含まれる香り成分「3.5ジメトキシトルエン」はヒトの心身に働きリラックス効果や鎮静効果など良い影響をもたらすことが分かりました。「3.5-ジメトキシトルエン」は「ジメトキシメチルベンゼン」とも呼ばれ、バラなどに多く含まれる芳香成分です。キンギョソウは今後、バラと並び香りの効能や機能性の実証が期待される芳香花と思います。

キンギョソウはハチやアブなどが虫媒するため午前中暖かいほど良く香り、またバタフライ系ペンステモン咲きよりも通常のキンギョソウタイプ(ベル咲き)の方が香りの保ちが良い傾向にあるようです。香りの良い品種を選ぶ際の参考にされてみてはいかがでしょうか。

シャクヤク

Category: 草花類

シャクヤクとは

シャクヤクは中国北部から北朝鮮北部を原産地としております。ヨーロッパでは「5月のバラ」と称され、初夏を象徴する代表的な花として親しまれています。
国内では主に高冷地を中心に栽培されており、出荷時期は5~6月にピークを迎えます。婚礼用として周年需要があり、南半球のニュージーランドからの出荷もあります。

シャクヤクの香りとは

シャクヤクにはバラ、キク、スズラン、カトレアなどあらゆる花の芳香成分が含まれていることが分かっています。弊社では、それぞれ異なる香りの特徴と芳香成分から、シャクヤクの香りを4タイプに分類しました。
調査により大枠では「和シャクヤク」はキク様の香り、または芳香性の低いものが多く、「洋シャクヤク」はバラやキク様のフローラルな香り、「中国シャクヤク」はバラ、キク、ラン様の香りを持っていることが分かりました。

シャクヤクの香りのタイプ分類

シャクヤクは、その香りの特徴や成分の配合バランスによって3タイプに分類され、以下の香りの表記はセリ機、インターネット受発注システムに掲載されています。

※香りの強さは3段階で表記されています。

①ロージーグリーンの香り :表記(RG)
バラとキクの香りの特徴を併せ持つ。現在流通する切花品種の大半を占める香り。

②グリーンの香り :表記(G)
キク様のカンファー(樟脳)の香り。

③ロージーの香り :表記(R)
バラ様の甘い香り。

④ロージーオーキッドの香り :(RO)
バラ(ロージー)の甘い香りにカトレアなどの蘭(オーキッド)のスパイシーな香りを併せ持つ。

ロージーオーキッドの香りを持つ流通品種は、切花においては現在ありません。

※上記の他、シャクヤクの中にはハエなどの虫を呼ぶ香り(アミン臭)をもつ芳香性の低い品種も見られましたが、それらは芳香と捉えず分類からは除いています。

シャクヤクの芳香品種(切花流通品種)の詳細は、花情報提供サービス
「ここほれわんわん」からご覧いただけます。是非ご参考ください。

スイートピー

Category: 草花類

スイートピーとは

スイートピーは地中海沿岸が原産地です。”Sweetpea”(英名で「香りの良いえんどう豆」の意)、”ジャコウレンリソウ”の和名に表される通り、代表的な芳香花として12月から3月にかけて出回ります。日本での切花栽培は大正時代に神奈川県に始まって以来、今日まで全国各地に広がりました。品種改良が大変盛んで、花色と花型のバリエーションも魅力的です。

スイートピーの香りの特徴

現在、切り花として出回るスイートピーは原種「ラティルス・オドラタス」の園芸品種だと言われています。原種のスイートピーは、ヒヤシンス・スミレ様の香りに、ジャスミンなどにも見られる濃厚な匂いをともなう力強い芳香があり、その香りのベースは現在の流通品種にも受け継がれています。

スイートピーは、その香りの特徴や成分の配合バランスによって3タイプに分類され、以下の香りの表記はセリ機、インターネット受発注システムに掲載されています。

※香りの強さは3段階で表記されています。

①スイートピーの香り :表記(P)

バラ、ヒヤシンス様の香りに柑橘類やブドウに似たフルーティな特徴を持ち、強香。
主に原種系のスイートピー(現在の切花流通品種では「スイートスノー」、「スイートピンク」のみ)に見られる香り。

②フルーティの香り :表記(F)

バラ、ブドウに似た甘くフルーティな香り。現在流通しているの園芸品種の中でも、より原種に近い品種に見られる香り。

③グリーンの香り :表記(G)

バラ、柑橘類、フレッシュグリーンの爽やかな香り。品種改良によって香りを持たなくなった近年の品種に見られ、微香であることが多い。

原種の香りに近いスイートピータイプの香りをもつ品種「スイートピンク」「スイートスノー」

産地:神奈川県チャコ農園(2010年3月現在)

チャコ農園の産地ウンチク探検隊はこちらよりご覧いただけます。また、仕入れに関するお問い合わせは ㈱大田花き仕入第4チームまで ℡03-3799-5000

香りの成分分析

原種系品種と流通品種の花香をGC/MS機器により成分分析を行いました。

その結果、原種系スイートピーには各芳香成分がバランス良く含まれており、全体を通して質の高い香りを持っていることが分りました。

スイートピーの芳香品種(切花流通品種)の詳細は、花情報提供サービス
「ここほれわんわん」からご覧いただけます。是非ご参考ください。

スイートピーの香りの活用法

ヨーロッパではスイートピーをベッドルームなどに飾り、ルームフレグランスとして香りを楽しんだようです。枕元の甘い香りに、リラックス効果も期待出来るのではないでしょうか。またスイートピーの香りは、チューリップやフリージア、リューココリーネなど春の芳香花とも良く調和するため、ブーケやアレンジメントの中でそれらを組み合わせて提案されても良いと思います。

カーネーション

Category: 草花類

 

カーネーションについて

カーネーション栽培の起源は古く、ギリシャ時代からすでに観賞用、食用として栽培されていたそうです。カーネーションの香りはスパイスの丁子(クローブ)に似たスパイス香が特徴となっています。甘くスパイシーな香りには香辛料の成分があり、ヨーロッパでは古くからブドウ酒や料理、香水の原料に使われてきました。
また、カーネーションの香りには酒酔いを防ぐ効果があると信じられており、酒席ではカーネーションで作った冠を頭に載せたそうです。このことから、カーネーションの語源はcoronation(冠飾り)に由来するともいわれます。

カーネーションの香りとは

カーネーションは、オイゲノールを主成分として、フェニルエチルアルコール、ベンジルベンゾエート、ベンジルサリシレート、シンナミルアルコール、シトロネロールなどを含みます。

カ―ネーションのエッセンシャルオイルは有機溶剤を用いた溶剤抽出法によって採集されますが、収集率0.03%と低く高価なため生産量が減少しています。

カーネーションの香りのタイプ分類

カーネーションはその香り成分の配合バランスによって3タイプに分類され、以下の香りの表記はセリ機、インターネット受発注システムに掲載されています。

※香りの強さは3段階で表記されています。

①フローラルスパイシーの香り : 表記(S)

スパイスの丁子(クローブ)、スターアニス(八角)の香り。

②ロージーグリーンの香り : 表記(R)

ローズやスズラン、ヒヤシンスの香りを含むグリーン調の香り。主にダイアンサスに見られる香りだが、微香である場合が多い。

③バニラ :表記(V)

甘くパウダリーなバニラの香り。主にダイアンサスに見られる香り。

※上記表の見方

㈱大田花き花の生活研究所では、カーネーション品種「ユーコン」「モキト」とダイアンサス品種「ソネットキュウ」「KC08-015」について成分分析を行いました。上記の表は、4品種に見られた特徴的な芳香成分(%)を一覧表にしたものです。”香り成分”は、含有している成分名、”香り/品種名”は、”香り成分”を表す表現が明記されています。

上記の表から、カーネーション「ユーコン」「モキト」はフローラルスパイシーな香り成分を多く含み、ダイアンサス品種「ソネットキュウ」「KC08-015」はロージーやヒヤシンスグリーンの香り成分を多く含んでいることが分かります。よって、カーネーションに見られる特徴的な香りは”フローラルスパイシー”、ダイアンサスに見られる特徴的な香りは”ロージーグリーン”とタイプ分類をしました。

※香り表現について

・ロージー/バラの香りに見られる特徴的な香り。主にバラ様のフローラルノートを指す。

・ヒアシンスグリーン/ヒアシンスなどに見られる、グリーンノートを指す。

・フローラルスパイシー/フローラルノートの香りに、スパイス香を思わせるスパイシーな香りを併せ持つ。

分析データ提供:曽田香料株式会社より。

カーネーションの芳香品種(切花流通品種)の詳細は、花情報提供サービス

「ここほれわんわん」からご覧いただけます。是非ご参考ください。

カーネーションの香りの活用法

カーネーションに見られる丁子(クローブ)の香りは古くから食料の香り付けなどに用いられており、その香りには消化の働きを助ける働きがあるといわれています。エジプトのクレオパトラも自らの船の帆先に丁子(クローブ)の香りをつけて存在をアピールしたといわれています。

また、香水(フレグランス)の創作においてもカーネーションの香りは重要な位置付けにあります。カーネーションの香りを用いた代表作にはコティ社「オリガン」や、ニナリッチ社「レールデュタン」、エスティーローダー社「スペルバウンド」、「エタニティ」などです。これらの香水の調香をヒントに、生花を使って再現してみるのも興味深いことと思います。

芳香花を組み合わせた香りのブーケやアレンジメントにおいては、残香性の強いカーネーションによって全体の香り保ちを良くしたり、暖かみのあるスパイシーな香りがバラやハーブなど芳香花の香りと調和し、香りに厚みをもたらします。

生花のカーネーションのスパイシーな丁子(クローブ)のような香りは暖かいほど香りやすく、開花するほど香りが強まり、1~2週間近く香りを放ち続けます。花保ちの良さと香り保ちの良さを生かすことの出来る芳香花だと思います。

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