OPERATIONAL PERFORMANCE花研コーヒーブレイク

オリンピックブーケについて思いを巡らせてみる

2015.06.30

東京オリンピックの開催を5年後に控え、国内は盛り上がってきている。

オリンピックを飾る花の一つとして、メダリストに授与するビクトリーブーケがある。この花材やデザインはどうあるべきかということがよく話題になり、アタクシ自身も楽しみにしていることの一つ。

オリンピックのビクトリーブーケはどのようなことが考慮されてデザインされていくのか。

まだ記憶に新しい2012年ロンドンオリンピックのブーケは、ローズマリー、ラベンダー、アップルミントのハーブと麦に加え、ロゴマークを反映した4色のバラを取り入れたデザインだった。英国フローリストのトップブランド、ジェーン・パッカーによるものだ。

ビジュアル的にインパクトがあり、大会の活況を映した明るい色目、会場に冷蔵庫がない中、夏季の気温に耐え、スタッフの誰でも容易に管理できるものという点が考慮された。

4,800個あまりに及ぶ制作は英国全土のフローリスト見習いなどの手に託された。ちなみに、2010年のバンクーバー冬季大会では、社会復帰を目指す女性などの手によって制作され、それ自体が社会貢献的な意義を持っていたという。

 

ところで、ロンドンではバラを採用したものの、実はそれまで国内で商用の切りバラを生産していなかった。そこで、プロジェクトとして英国南部でバラ生産を始めた。全体的にバラの輪径が小さいように思えたのは、株がまだ若かったからかもしれない。バラは株が若いと輪径が大きくなりにくい。オリンピックが終わった今、プロジェクトの圃場はどうなったか気にになるところではある。

 

ブーケには細かな規定がある。過去の制作者のウェブサイトによると長さは25-30cm、直径は約25cm、香りと花粉には選手のアレルギー反応を考慮し、極力控えることとされている。ロンドンのブーケは良い香りがしたに違いないが、勝利の瞬間を選手に香りで印象付けるため。アレルギーを引き起こす品目は避けたと明言している。女子サッカーで金メダルを獲得した米国チームのキャプテン、ワンバック選手は、ビクトリーブーケを受け取った瞬間に、顔を花に近づけ満面の笑顔を見せた。(彼女は名プレーヤーというだけではなく、心の豊かな人だと思うネー)

 

また、固いものや刺さるようなものを入れてはいけない。大勢の中にブーケを投げるかもしれないから。もちろん日持ちも十分考慮されたもので、花材は開催国の地域性や文化を反映したものであることなど、その規定は多岐にわたる。

規定になくても注意しないといけないこともある。例えばの話だが、葬儀で使う花として定番化した花をビクトリーブーケに使ったら?その際は使い方や切前などに十分気を付けないといけない。「葬儀の花がビクトリーブーケに!?」となったら国際メディアは黙っていないだろう。どこかの国にお得意の風刺画で描かれようものなら、そのつもりはなくても国際問題に発展する可能性すらある。

 

まずはIOC、あるいはJOCの規定を確認し、その上で素材やデザインを考えたい。ホスト国である日本からのメッセージ性を持ち、社会的貢献もできるといい。見た目も重要。世界の人々の目に触れることは間違いない。品目のPRより、選手たちへのおもてなしやオリンピックで果たす日本の役割を第一義に制作できると花き業界の存在は大きくなるのではないだろうか。

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