花研コーヒーブレイク
5月1日 スズランの日(シンヤワールドへようこそ!)
2015.05.01
フランスでは5月1日にスズランの花(フランス語でミュゲといいます)を贈り合う習慣があります。厳しい冬が終わり、ヨーロッパでは草木が芽吹き始めるこの時期に、春の再来を祝い贈り合うものです。「幸福の再来」、「幸福が訪れる」といった花言葉を持つスズランは贈られると幸せになると信じられています。
月明かりの下でも映える美しい純白と、小さなベルの形をした花は、まるで妖精が住んでいるかのように可愛らしく、その姿は「聖母の涙」とも呼ばれています。スズランの魅力はその生き生きとしたライトグリーンの葉にもあり、純白の花の魅力をさらに引き出します。葉があってこそのスズラン、観賞の際はなるべく葉を付けたまま飾りたいものです。
そしてスズラン最大の魅力はなんといってもその香りにあります。バラ・ジャスミンと並び世界三大芳香花に数えられるスズラン。三大芳香花の中で最も上品な香りを持っているように個人的には思います。シャープで爽やかな香りの中に上品さも感じさせるスズランの香りは、他の植物にはない香りです。
分類された7タイプの香りの中でもダマスククラシック香の品種が少ないバラ、香りは良くても市場入荷のほとんどない茉莉花(アラビアンジャスミン)、柊木犀やオガタマのような極めて良い香りを放つ芳香花もほぼ出回らないため、市場流通する花の中でスズランは究極の芳香花だと思っています。スズランは、以前ユリ科の球根植物に分類されていましたが、現在はクサスギカズラ科スズラン亜科に属しています。同じクサスギカズラ科のうち、クサスギカズラ亜科に属するものとしてはアスパラガスがあり、スズラン亜科とは比較的近い分類になります。多年草で、地下部は球根にならず、主に地下茎によって繁殖します。ときには厄介と思えるほど繁殖力旺盛なドクダミ並みに、地下茎の繁殖力が強い植物です。
スズランは未だ流通期も流通量も限られ、影の薄い植物かもしれません。さらには、生花のスズランの香りをご存知の方は、まだまだ少ないと思います。30年程前、鉢物のカルセオラリアやポトスがブームだった頃、スズランやアマドコロを庭木や鉢に植えることが流行りましたが、この頃花に興味を持った世代の方なら、スズランと聞けば条件反射的に「香りの良い花」と思いが浮かぶでしょう。しかし、それ以降の世代の皆様はどうでしょうか。
例えば、マーガレットという植物がありますが、この名前を今の女子中高生に聞いて「花」と答えるか、「植物」と答えるか、はたまた全く別物ものであると答えるか。ひょっとすると、多くの女子中高生は「別マ」(少女マンガ雑誌「別冊マーガレット」の略)や「アオハライド」(「別冊マーガレット」に連載されたマンガ)、「俺物語」(同左)などと答えるかもしれません。マンガ雑誌で育った若い世代になればなるほど、花の知名度も低くなると思っています。
スズランのような芳香花であれば消費者に香りを嗅いでもらい、その素晴らしさを知ってもらうこと、花が持つ面白さやストーリーを突いていくこと、これがこれからの花のプロモーションには必要不可欠だと考えています。
(む)
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市場に流通する香りのよいスズランは、ドイツスズランと呼ばれるタイプです。日本に自生するタイプより一回り大きく、香りが良いのが特徴です。市場流通は長野県をはじめとし、群馬県や北海道などから出荷されます。お値段も手ごろで、この季節に涼風を運んできてくれる爽やかで愛らしい花ですので、ぜひお試しくださいませ。
ちなみに、小欄ではくどいほどお伝えしていて恐縮な限りですが、スズランはラン科の植物ではありません。クンシラン、ナルコラン、スズラン・・・「ラン」とは名ばかりで、実はラン科ではありません。(但し「エゾスズラン」はラン科の植物。日本語の名前はニックネームのようなものですね)ま、植物の分類はご興味がなければ気にする必要はないと思います。今日はスズランを買って帰り、その愛らしさに一心不ランに浸りたいと思います。