OPERATIONAL PERFORMANCE花研コーヒーブレイク

学名はなぜラテン語か

2014.05.07

動植物、細菌やウィルスまで含めてあらゆる生物の学名(世界共通の名称、scientific name)はラテン語で付けられています。

バラを例にとれば、バラは和名(「いばら」に由来)、学名はRosa(ロサ)です。ではRose(ローズ)は?というとこれは英名です。

ヒマワリでいけば、ヒマワリが和名、学名はHelianthus(「太陽の花」の意味)、英名はsunflowerです。

 

花のマーケットや消費の現場において、花の呼称は和名のほかに、英名や学名に由来しているものが混在しています。

和名で呼ぶもの・・・キク、ユリ、トルコギキョウ、ナデシコ、スイレン、ハス、カスミソウ、スズラン、スミレ、サクラ、モモ、ケイトウなど

英名で呼ぶもの・・・ラベンダー、スイートピー、マーガレット、レースフラワー、ライラック、スモークツリー、カーネーション、ポインセチアなど

学名がそのまま呼称として使われているもの・・・ラナンキュラス、デルフィニウム、ガーベラ、アルストロメリア、マトリカリア(英名はカモミール)、フリージア、ヘリコニア、コスモス、カトレアなど


※学名と英名が重なるものもあります。また、同じ植物名にもかかわらず、市場取引で便宜的に学名と英名を使い分けることがあります。たとえば、スモークツリー(英名)とコチナス(学名)は同じ植物ですが、ふわふわの花序がついているものをスモークツリー、花序なしの枝葉をコチナスを呼びます(大田花き)。ダイアンサスとカーネーションも然り。カーネーションの学名はダイアンサスですが、市場でダイアンサスというと、カーネーション意外のナデシコ属、つまりナデシコの花を指します。ま、商習慣から生まれた符丁か専門の取引コードのようなものといったところでしょうか。

 

こうしてみると昔から日本人に馴染みがあり、知名度の高いものは和名、マーケットでも洋花として「比較的」新しいものは学名や英名が日本に紹介された名前がそのまま使われているようにも思います。西洋のものが“カッコいい”として、名前もそのまま導入された・・・ということもあるかもしれません。

 

これ自体がどうかということではなく(・・・今日のところは)、なぜ、学名はラテン語と決められているのかということについてです。

あ~、前置き長かったなー。すみません。

結論を申し上げれば、現在ラテン語は「誰も使っていない言語だから」です。

※一部の新聞やSNSなどで使用されているらしく、厳密にいえば「ほぼ誰も使っていない言語」です。

 

ラテン語は古代ローマ帝国で使われていた言語で、1700年ころまで、とりわけカトリック教会の公用語としてヨーロッパ全域で使われていました。現在は使われていませんが、インド・ヨーロッパ語族のイタリック語派であるラテン語からフランス語やスペイン語、イタリア語が派生しており、同じくインド・ヨーロッパ語族の英語(ゲルマン語派)にも大きな影響を及ぼしています。

今は使われていないと聞くとどれだけ古い言語かと思いますが、ルターと同じ時代を生きた哲学者エラスムスがラテン語で著述をしていたり、トマス・モアの『ユートピア』がラテン語で記されたと聞けば、それほど古い言語ではないことに気付きます(でもやっぱり古いか?)。当時、ヨーロッパでは知識人の公用語ともされていました。

その後、思想家や知識人は母語で著述をするようになり、徐々にラテン語は使われなくなっていったのです。

 

ではなぜ、今使われていないラテン語を学名に使うのかという話に戻りますが、“誰も使っていないから、誰にとっても公平な言語である”から、また使用されている言語と違い、(ほぼ)死語であることから“今後意味や用法が変わることがない”からです。また、知識人の公用語であったことから、教養と格式のある言語、つまりアカデミックだからということもあるかもしれません。

きちんと理由があったのですね。

ついでに申し上げれば、学名はイタリック体(斜字体)で記載することになっています。

 

花の業界にはご存知の方も多いかもしれませんが、ちょっとコラムってみました^^

 

ちなみにラテン語で「花」は、

 

 

 

・・・flos

 

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