花研コーヒーブレイク
消費者に伝える水揚げ方法
2014.04.16
一般の消費者に向けた様々なメディアで、初心者向けの水揚げ方法や長持ちさせる方法を見聞きします。最近は気温が上がってきましたから尚更ですね。
そこで紹介されることは、例えば以下のものが多いように思います。
・湯揚げ
・焼く
・水切り
・良く切れるナイフで
・枝物はハンマーで叩く
・アルコールに浸ける
・水を毎日交換する
ところが、拝見していて疑問に思うのは、これらの水揚げ方法は本当に初心者がやりやすいものなのだろうかということです。多くの場合、初心者向けといいながら、難しかったり、大変手を煩わせるものだったりします。
以下、右側に花初心者の声を代弁してみました。(20代女性設定か?)
・湯揚げ・・・何度のお湯にどのくらい浸ければいいの?そのためにお湯わかすのぉ~?温度計ないし。
・焼く・・・どこまで焼いたらいいの?サンマくらい?焦げてもいいの?失敗しそう。花まで燃えちゃったりして。ていうか、コワイ。
・水切り・・・ちょっと面倒かな。水を溜める入れ物ないし。
・良く切れるナイフで・・・危ないっつーの。使い方わかんないし。どこで売っているかもわかんなーい。
・(枝物など)ハンマーで叩く・・・ハンマー持っていないし。花のためにハンマー買う?
・アルコールに浸ける・・・これこそもったいなーい!自分で飲まずに花に飲ませる?絶対できなーいッ!
・水を毎日交換する・・・仕事して帰ってきて、毎日水を取り替えるなんて、私には過酷な労働!そんなに水って汚れるの?
水揚げ方法のご紹介は、プロや上級者にはいいと思います。(その場合は品目ごとに適、不適がありますから、それも明記が必要でしょう)
しかし、花を楽しむ初心者にとってはどうでしょうか。
「そんなに手間がかかるのだったら、花いらないかも」
と言われてしまいそうです。親切どころか、花を敬遠させてしまうことになりかねません。初心者に花を楽しんでもらうためには、むしろマイナスプロモーションになってしまうということです。
もっと広く生活者の皆さまに花を使っていただくには、花の取り扱いの敷居を低くして、気軽に楽しめるものであることを広めていく必要があるではないかと思うのです。しかも、昨今では業界の各分野の皆さまの積年のご努力で、どなたでも花瓶と水さえあれば120%切花を気軽に楽しめるようになりました。
水を毎日取り換える必要もないでしょう(盛夏+水が汚れやすい性質の花でない限りは)。良く切れるナイフも、お湯を沸かす必要も、ガスコンロで焼く必要もありません。アルコールはご自身で飲んでください。
ただ、切花栄養剤を使えばいいだけです。水を毎日取り換えるよりも、花が大輪に咲き、且つ日持ちします。花の発色も枯れ方も全く違います。
これさえ使えばハサミで十分です。市場に勤務している人でも、自宅で花を楽しむ時にナイフで切り戻して、毎日水を取り替えている人はあまりいないのではないかと思います。影響力のあるメディアを通して楽しみ方をご紹介される時は、難しくてアブナイ水揚げ方法よりも、手軽な切花栄養剤の利用を勧めていただければ花の消費促進にもつながるのではないでしょうか。
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尚、アルコールを使うことの効果について、宇田花づくり研究所の宇田明先生 に伺ってみました。
私が理解したところによると、1960年代、エチレンカットの効果を期待してアルコールが使われ始めました。
カスミソウやデルフィニウム、スイートピーなどエチレンに弱い植物は、自らの出すエチレンにより老化が早まり、花持ちが大変短い花でした。この頃は何がエチレンカットに有効なのかと、研究者の間ではアルコールばかりではなく様々なものが試されたといいます。その中でアルコールが比較的効くようだと、使われ始めたそうです。
ですから、この時代に生け花などで花を学んでいらした方、またはその方から花生けを伝授された方は、アルコールを使う方が多いのでしょう。
しかし、1980年代には「銀」がエチレンカットに絶大な効果を発揮することが判明し、銀を含む専用のSTS剤が開発されました。今となっては、エチレンに弱い花はほぼ100%生産農家さんでSTS処理されて出荷されるため、エチレンに弱い花も日持ちしないということはまずありません。ましてや、ユーザーが改めてアルコールを使いエチレンカットをする必要はないのです。
相当アルコール度数が高ければ殺菌の効果もあるかもしれませんが、その場合は60%以上などの度数にて・・・であれば、わざわざアルコールで殺菌する必要はないでしょう。