花研コーヒーブレイク
2020年東京五輪に向けて 【後編】
2013.09.12
・・・昨日の小欄の続きです・・・
数を言えば先述の通り、長野の時は800個のブーケが作られました。ロンドンの時は4,400個。
ロンドンでは26競技302種目でしたが、東京では28競技(メディアによっては27と報道しているところもある。上限は28競技と決まっている) で、過去最高になる見込みなのだそう。少し増えたとしても4,500個くらいでしょうか。
このブーケに自分が生産している花を使ってほしいと思ったとしましょう。
例えば、自分の花を2本ずつ入れたとしても、使用量は9,000-10,000本くらい。パラリンピックを入れるともう少し多くなるでしょうが、ここは計算のためにオリンピックを例にとって考えると、開催期間のおよそ2週間で10,000本が必要なると、日本の場合は複数の生産者さんから集めて出荷することになりますが、一団体であれば2週間で10,000本とは利益にしたら幾ばくか。マイナスよりはもちろんいいに違いありませんが。
ご自身で生産される花をビクトリーブーケにしようと推薦するなら、その目的を明確に持つべきではないかと思うのです。利益目的なのか、PR目的なのか、はたまた自身の中の名誉目的なのか。
みなさん、例えば1998年の長野オリンピックの時のビクトリーブーケに使われた花を、昨日ここに記載するまでに思い出せた方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。
確かに人の記憶に残らなかったとしても、当時の出荷者様にとってはこの上なく名誉なことです。花の業界の中においては大変な武勇伝です。
とはいえ、そのビクトリーブーケに影響されて消費者のみなさまが「アルストロメリア」という花をどのくらい覚え、家に飾ってみたのかなと疑問に思います。
折しも花き産業の最盛期に開催された長野オリンピックでは、スキーのジャンプで船木選手が金メダルと銀メダル獲得、おまけにラージヒル団体で金メダル、スピードスケートではごご存知清水宏保選手が金メダル、モーグルの里谷多英選手は冬のオリンピック史上、日本女子で初の金メダルを獲得しました。合計で日本は金5、銀1、銅4でメダル10個。4位以下の入賞も計23を数え、70年ぶりに欧米と肩を並べる強豪国の一角となったというほど盛り上がったオリンピックだったのです。
そのようなオリンピックで使われても尚、アルストロメリアにピンポイントで跳ね返った効果はどのくらいあるでしょうか。どれだけの一般の人々の脳裏に“アルストロメリア”という花が残ったでしょうか。
一つの品目に愛着のある方でしたら、ビクトリーブーケに使ってほしいという気持ちは強いことは確かです。
しかし、ビクトリーブーケに使われればそれでいいという結論でもないでしょう。生産者の皆さまにとっては本当にそれがゴールなのでしょうか。
そこは他の品目と争うところではないと思うのです。もしご自身の品目のPR目的であれば、その品目を使ってもらうことにどのくらい意味があるのか、どのようにしたら意味を持たせることができるかが腕の見せどころです。今回の招致プレゼン主旨である「おもてなし文化」に則り、提案してみるのもいいでしょう。
選手村(もし輸出を視野に入れているなら尚更!)やホテル、お出迎えの空港などに日本の花を象徴すべく飾ってもらうのもいいでしょう。
オリンピックの花はビクトリーブーケだけではありません。それよりもむしろ、そのほかで使う花の方が多いのではないかとさえ思います。
ビクトリーブーケの花材として選んでもらうことに、一過性の何かを狙うのか、それともこの機会を使ってプロモーションをし、いかに花を生活の中に取り入れてもらうよう提案していくのか。販売目的よりも、むしろその機会を利用するよう進めていきたいところです。是非瞬間風速的なものを期待して、品目ごとに我の我のとならないよう願うばかりです。
将来のビクトリーブーケのデザイナーさんには、選手の努力と勝利を称え、長く心に残るブーケを作っていただければこれほど嬉しいことはありません。
もし、オリンピックで特定の花を推進していきたいということであれば、目的を持ち、是非その目的に即した方法でPRしていただきたいと思います。
もちろん、私どももその目的達成に向けて、できることは協力させていただく所存です。