花研コーヒーブレイク
「うなぎ」と「かぼちゃ」と「さくらんぼ」
2023.07.20
こんにちは。みんなの花研ひろばです。
大相撲の横綱土俵入りといえば、雲龍型と不知火型。
輸入の花きの流通なら「うなぎ型」と「さくらんぼ型」があるかもって話。国産がないタイミングで輸入すべきか、国産があるときに合わせて出すべきか、需要が大きすぎて供給に不足感があるとき輸入を増やすべきか。輸入の花きは国産とどう共栄共存していくか流通のタイミングのパターンとして整理してみたいと思います。
いくつかパターンがありますが、ここではまず次の2つ取り上げてみたいと思います。
パターン1:花きの場合、輸入品は国産の不足を補うべく、需要のピークに合わせて供給を充当してくことが好ましい。
パターン2:花きの場合、輸入品は国産の出荷ピークを迎える前に(国産が潤沢に流通する前に)、その走りとして供給を充当していくことが好ましい。
これは両方戦略的に◎なのだそうです。なんだか矛盾している例のように思いましたが、このパターンを提唱したボンソワール桐生に聞いてみますと、実は全く矛盾していないことに気づかされました。取引の状況は品目によってパターン1と2を使い分けるということです。
まず、パターン1について。
需要が高まったタイミングや需要のピークに合わせて輸入品を出荷するというケースです。
例えば、土用丑の日を中心に需要が高まり、うなぎは国産の流通が需要を充分に満たすほどではなくなったときに十分に輸入品を共有することで、道を拓いていくということに近いかもしれません。
ちなみに、農林水産省のHPによると、2021年のうなぎの国内供給量のうち輸入は67%ほどのようです。年間を通した数字ですので、需要のピーク時がどうかまではわかりませんが、輸入品に頼る率は高い品目といえますね。稚魚を入れるとなんちゃらかんちゃらという展開もありそうですが、そちらはその道の専門家にお任せして、ここではざっくりとしたことまで。このパターン1をうなぎ型と呼ぶことにします。今日だけ、ここだけの話です。
一方、パターン2について。
国産が旬を迎える前に旬の走りとして出荷するパターン。出荷の旬を先取りすることで流通の価値を高めていきます。
例えばスーパーマーケットに行くと、国産のさくらんぼが流通する前に、まず輸入品であるアメリカンチェリーが売り場で幅を利かせていることがあります。じきに一瞬ですがアメリカンチェリーと国産とが肩を並べ、国産がいよいよ旬を迎え潤沢に流通するころには売り場でアメリカンチェリーは息を潜めていきます。
従いまして、国産の旬に先駆けて輸入を出荷していくパターンをさくらんぼ型と呼ぶことにします。今日だけ、ここだけの話。
花きの輸入品についてもこのうなぎ型とさくらんぼ型を使い分けるといいかもしれません。
例えば、カーネーションやキクなど、大きな物日があって国内供給だけではその需要を満たせないような場合はうなぎ型でGO。
一方、シャクヤクやライラックなど、国内の供給のピークに先駆けて、価値を高めるために出荷するのはさくらんぼ型でGO。
あとは、国産の流通がほぼないときを狙う「表と裏」作戦がありますかね。ここでは「かぼちゃ型」とでもしましょうか。花きの場合はシンビジウムなどがこれに当たりますね。輸出が先で最近国産が増えたカンガルーポーも新しいかぼちゃ型といえるかもしれません。
実際にはこのようにうまくスパッと割り切れないとは思いますが、出荷期を考える流通モデルとしては参考になるかもしれません。
マーケティングでまずSTPと4Pを検討するのは鉄板ですが、花き輸入品の場合は出荷のタイミングも加えて検討が必要ということですね。
実際にはこれほどシンプルに割り切れるわけではなく、花きの輸入は奥深く本当に大変な事業だと思います。国産切花の出荷本数が1年で1億本(強)のペースで減少していく昨今、国産振興と同時に輸入品への期待も高まっていくことでしょう。
それではみなさま、ごきげんよう。