花研コーヒーブレイク
生産品種をいかに決めるか
2013.06.20
ロイヤル・プライド・ホランドというトマトの生産企業をご存知だろうか。
過日、NHKの『クローズアップ現代』という番組でオランダの農業が特集されていた時に紹介されたから、名前に聞き覚えのある方もいらっしゃるかもしれない。
オランダで最大級のトマト生産企業で、生産面積およそ150ha、また近い将来プラス245haの拡大を予定している。東京ドームがおよそ4.7haだから、想像しただけでもとてつもなく大きい圃場である。
圃場に足を一歩踏み入れれば、見渡す限りのトマトの施設栽培。
そこの社長がおっしゃったことが印象的。
トマトの生産品種をどのように決めるのかという問いかけに対し、
「私に品種を決める権限なんてまったくないよ~」
とさらり。
ではどうしているのかというと、マーケティング会社に完全に委託して、消費者が好むトマトのアンケート調査をするという。ロイヤル・プライド・ホランドはその結果に基づいた品種を選ぶだけ。
オランダらしくスンゴイ合理的!と思うと同時に、やはりこれは見習うところがあるのでは?なんて思いまして。
品種数の多い花き業界。鉢でも切りでもどの品種を残して、どれを死に筋認定するか、悩みどころなのではないだろうか。
日本の花き生産者さんは、生産や育種品種について、実需者や消費者にアンケート調査をしてみたことがどのくらいあるだろうか。
切り花については時折市場でも調査されているのを見かけるが、鉢物は?(自戒も込めて)
以前、大田花きに商品開発室があったときに、鉢物の生産者さんから成る某会の運営を担当していた。その時にそれぞれの生産者さんからアジサイで一押しの新品種を市場に送っていただき、大田市場に集まる買参人・仲買人の皆さまに「どれがいいかアンケート」をお願いした。展示10-12品種。
結果を集計すると答えは明解で、ある似たような2品種が圧倒的な票を集めた。通常のアジサイよりも鉢も仕立ても一回り小さく、サイズ感もよかった。手毬のようなコロンとした花序が1-2輪付いただけの品のある仕立てて、小さくても高く売れることは一目でわかる品種だった。
しかし、その2品種はいずれも未だに市場に流通していない。あれほどぶっちぎりでトップフローリストを含む買参人の皆さまから集票したのに、なぜ作って販売されないのか・・・とひたすら思う。生産効率が相当悪いか、技術的に壁が高いか・・・?
アンケートを行うことも大切だし、その結果を眠らせずに、是非出荷商品に反映させていただきたい。
流行は変わる。その時にやったアジサイのアンケートも、今実施したら違う結果になっているかもしれない。なにしろもう6-7年経っているのだから。
鉢物でなくても、嗜好は時代とともにどんどん変化する。例えば枝物。フサスグリでいけば生産者さんは太くて長い立派な一本棒を目指すかもしれないが、某トップフローリストさんに伺うと細くてしなやかで、スプレー状になっているもの、またあまり長くない方がいい・・・というご意見を頂戴することもある。
もちろん生産者さんのインスピレーションも決断力も必要。生産効率も考慮することも経営上欠かせない。
しかし、独断が過ぎると「売れない」という結果を招きかねない。ここで昨日の話。品目には罪はない。いかに仕上げて出荷販売するかの問題。
もう一度、生産品目の品種や仕立て、サイズを見直して、一度実需者を対象にしたアンケート調査も定期的に実施してみてはどうかなと思う。