花研コーヒーブレイク
売れるものを作る視点を
2013.06.19
6月18日の卸売市場における鉢物取引を見ていて思ったこと・・・他の生産者さんができないスゴイ技術を以って立派な商品を仕立てることと、売れる商品を作ることとは全く違うんだな。
スゴイと技術を褒められるものや立派なものを作っても、売れる(出荷者が満足する卸値で取引し続けられる)とは限らない。
いつも行く食品スーパーに、直径30cmの傘のブラウンマッシュルームが10,000円で売っていたら、恐らく開口一発「スゴォーイッ」と驚嘆するだろう。でも自分は買うだろうかと考えてみる。
ではどうしたらいいのか。
ここで気付くことは、同じ「花き」でありながら、切花と鉢物ではマーケティングの手本とすべき業界が異なるのではないか。つまり手法が違うのではないかということ。切花は素材、鉢物は完成品として、共通点はあっても倣う方向を見誤るとうまくいかないこともあるのではないかと。鉢物はマーケティングのうまい生活消費財の業界などを見習ってもいいかもしれない。
過日、あるお花屋さんとご一緒させていただいた際、JR上野駅の中央広場で催している千葉県産の花のフェアを通りがかった。この広場はよく全国各地の名産品を販売するイベントを催している。
恐らく花以外の名産品も販売していたのだろうが、その売り場が霞んで見えるほど花売り場に人が集まり、みな花を手に取っていた。しかも集まっていたのは若い女性中心。
この光景を見た瞬間、花は売れるものなんだと改めて実感。
「売れない」「売れない」という日々の販売に頭を痛めるお花屋さんですらその光景を見て勇気付けられたようだ。そしてそのお花屋さんは「売っていないだけなんだ、売れるものを店頭に置かないのがいけないんだ・・・」と噛みしめるようにおっしゃっていた。
過日、講演でお邪魔したところでも、質疑応答の際に数名の生産者さんより「売れない商品をどこで諦めるべきか」「新商品を出荷して、思ったように売れなかったときに、どこで切りをつければいいのか」とのご質問を受けた。
本来なら、かけたコストと回収率の点からバチッとお答えしなければいけなかったのかもしれないが、生産者さんが自ら「売れない」と判断されることがどうしても気になってしまい、そのご判断に至る前にどうするかに話が逸れてしまった。
何を以ってして売れないと判断するのか難しいところ。世界に誇る高い生産技術があるのに、消費者の欲しいものに気付かず作らないだけで、その品目を「売れない」と判断するのは時期尚早ではないか。品目に罪はない。消費者の声を十分に聞かないところにボトルネックがある。
誰もが認める生産技術があって、上野で目撃したフェアのようにマーケットもある、しかしその間を消費者の希望を汲み取りきれずに提案・販売してしまっているために、そこでギュッと締めつけてしまっているように思えてならない。
「こんなの作れんねんでぇ~、すいごいやろ」と自分の技術を見せるか、もしくは「こんなの欲しいちゃうかと思って作ってみてん」(ナンデ関西弁?)と出荷するか。どこに視点を置くかで結果は大きく分かれる。
特に鉢物は完成品だから、切花よりさらに消費者の「欲しいもの」にそぐわないといけない。0か100かのような難しさがあるのかもしれない。だからこそ技術の見せ合いではなく、消費者が欲しいものを作る視点を持つことが大切。
では消費者が欲しいものをどうやって知るか。
小売店さんは売れるもの、売れないもの、こんなのあったらいいなを知っている。
いちいち口にはしないけど、それぞれのお花屋さんが心に思っていることは意外と同じだったりする。これかわいいな・・・でももう一回り小さい(大きい)サイズがあったらいいのに・・・とか。サイズをひとつ変えるだけで、「売れない」品目は動くようになる可能性だってある。従って、ご自身の商品を買ってくださっている小売店さんに足を運び、ご意見を伺ってみる。18日の取引でも「あれはスゴイけど、うちは買わない(買えない)」という声を何軒の小売店さんから聞いたことか。生産技術の高さは誰もが称賛、でも店頭で売れるものはまた別・・・このギャップをいかに埋めていくか。
もうひとつは市場や生産者ご自身が持つ販売データから解析してみる。(弊社でお力になれることがあれば、ご相談ください)
「売れない」と判を押す前に、市場だけではなく小売店さんやもっと消費の声を聞いてみたい。その要望に沿うものを作れる技術を磨きたい。 お菓子業界でも何でも、ギフト業界は昭和期から随分提案商品が変わってきたように思う。花は提案を変えてきたのか。技術が向上したのはわかるが、消費者の希望に沿った形で変わってきたのか振り返ってみる。特に鉢物。もし、そうでないとしたら、そのパイは別の業界に取られてしまっていてもやむを得まい。
もっと消費に耳を傾ければ、鉢物も切花もまだマーケットに伸びしろはある。