花研コーヒーブレイク
シャクヤクを食べるか否か
2013.05.21
群馬県出身の詩人で作家の星野富弘さんという方がいらっしゃいます。
昔は体育教師でしたが、20代の頃、体育の授業で飛び箱の実技中に不慮の事故に遭い、首から下が完全に麻痺してしまいました。動くのは首から上だけです。そこで彼は口に筆をくわえ、詩や絵の捜索を始めました。
少なくとも群馬県では有名な方で、どちらのご家庭にも星野さんの詩画集があるのではないかと思います。
花や果物などを描写し、そこに詩を添えるというのが彼の初期のころからの定番スタイル。全体的には圧倒的に花が多く、添えられる詩はまさに魂の声とも思えるほど。
以下は印象に残っている詩歌のひとつ。
☆さくら
車椅子をおしてもらって 桜の木の下まで行く
友人が枝を曲げると
私は 満開の花の中に埋ってしまった
湧き上がってくる感動を おさえることができず
私は口の周りに咲いていた
桜の花を むしゃむしゃと食べてしまった
この経験を今日、このシャクヤクの中で初めて体感したような気がします。
会社の食堂に飾ってあった満開のシャクヤクの香りを嗅ごうとして、顔を近づけているうちに、思わず顔がシャクヤクの中に埋もれ、ふと星野富弘さんの詩が頭に浮かびました。
皆で見て楽しむシャクヤクですから、さすがに食べてしまうことはできませんでしたが、確かにその衝動が生まれたことを感じました。
目が不自由な人は耳が良いという。
体にどこか不自由なところがあると、むしろその他の感覚や感性が磨かれるのでしょう。
そのような意味で、やや頭の回転に不自由を抱えているものの(これは自分の努力不足による。親の責任ではありません)、ひとまず体に不自由のないアタクシは、感性が鈍っているところがあるのかもしれません。
・・・ちなみにここまで開花するのは、いくら品種特性といえども、栄養剤が成し得る技が大きい。
大田花き品質カイゼン室のこちらのレポートをご覧ください。(←クリック)
栄養剤を使うと、同じ品種でも別の花かと思うくらい見事に開花します。