花研コーヒーブレイク
淡路水仙郷へ
2013.01.10
昨日縁起物の小欄で縁起物について書かせていただきましたが、花の縁起物について一つ。
ニホンスイセンです。
ニホンスイセンは暖かい春の到来をいち早く知らせるおめでたい花とされ、江戸時代には引っ越し等の節目を飾る縁起物ともされていました。
長く厳しい冬の後に、いち早く咲くスイセンに春到来の喜びを感じるのは日本人ばかりではないようで、例えば英国に行くとどの家の庭にもスイセンが植えられていることに気付きます。
さて、そのニホンスイセンが500万本植えられている淡路島の水仙郷に行ってまいりました。
500万本といってもスイセンは球根植物ですから分球に分球を重ね、実は数えてみるともっとあるかもしれません。
この水仙郷は、淡路島の東南に面した南あわじ市にあります。今から200年ほど前に付近の漁民が海岸に漂着した球根を山に植えたのが、標高600メートル以上、傾斜45度のこの山の斜面一面、約7ヘクタールにわたり繁殖してできたものです。
昨年の今頃は、もう見ごろは終わりだったそうですが、今年はまだ1-2分咲きと言ったところでしょうか。いかに今冬の気温が低いかを物語っています。そりゃ市場でもスイセンが足りないはずですわ。
急斜面に植えられていますから、写真を撮ればスイセンの向こうは空か海・・・何とも美しい風景です。
この斜面が一面スイセンの花で埋まると想像すると圧巻です。
スイセンの香りは強いグリーン系で、とりわけニホンスイセンは広がりのある甘さと爽やかさを併せ持ちます。ジャスミンの香りとよく調和し、フローラルな香りに重厚な印象を与える素材として化粧品の香料にも使われます。
一面のスイセンに囲まれれば、その楽しみは視覚的なものばかりではなく嗅覚にも訴求されます。
嗅覚による記憶は、感情を司る脳である大脳辺縁系に直接インプットされるようなので、満開の水仙郷をひとたび歩けば、後々まで絶景とともに素敵な思い出が蘇生される印象深い散策となるでしょう。
ダボー(八重)のスイセンも見つけました。
“淡路のスイセン”といえば全国的に有名で、福井の越前海岸、千葉の鋸南町とともにニホンスイセンの三大自生地に数えられます。いずれも海沿いであることから、太陽が好きで潮風にも強いことが分かります。
南あわじ市の海沿いを走っていると、道端の至る所にニホンスイセンが自生しています。シカし、最近ではシカが球根を丸ごと食べてしまうようで、徐々に減ってきているとのこと・・・もー、シカたないなぁ~。
千葉でもイノシシによる獣害に頭を痛めているようですが、イノシシは食べずに球根をひっくり返して遊んでいるだけだそうです。淡路のシカは球根を食べてしまうので、なかなかたちが悪いですね。しかし、スイセンの球根部分は有毒成分を含んでおりますので、皆さんはどんなにお腹が空いても絶対に食べないでくださいね。
そういえば、過日ノビルと間違えてスイセンの球根を引っこ抜いて食したら、食中毒症状を起こしてしまったというニュースがありましたね。ノビルはその葉も球根サイズもスイセンとは全然違います。ノビル採取を目的にする際は、事前にその葉をチェックしていってくださいね。(4,5歳の頃から、畔道のノビルを見つけては片っ端から引っこ抜いていた田舎者より)
この見事な水仙郷は、正式には灘黒岩水仙郷といいます。新春の行楽に是非お出かけください。
淡路島は気候も人も温かく、言うまでもなく食べ物も空気もおいしい。いいところですよ。