花研コーヒーブレイク
花きの卸売価格と原価上昇について
2022.06.04
こんにちは。みんなの花研ひろばです。
総務省が5月20日発表した4月の消費者物価指数のうち、生鮮食品を除く農産物を除く総合値は前年同月比で+2.1%でした。
このデータ発表を基に、様々な値上がりと賃金の関係について論じる報道が結構あります。その辺りはニュースなどを見ていただき、ここでは花きの卸売価格と資材価格の上昇と花き小売価格について、ちょっと古いのですが3月のデータから見てみましょう。
3月の卸売データが東京都のサイトを見ると公表されております。比較対象としてデータを集めやすいバラを取り上げます。2021年3月の中央卸売市場のバラ切花の平均単価が131円(税込)です。2022年3月のバラ切花の平均単価が143円(税込)でした。昨今の品薄高と需要拡大から取引価格が上昇し維持された状態にあります。東京都の市況用語ではこのような状態を品薄高、もしくは強もちあいの状態であると言えます。
小売価格はどうかといえば、これは総務省の小売物価統計調査から東京都区部におけるバラ切花の月別小売価格を調べます。2021年3月のバラ切花小売価格は360円(税込)に対して2022年3月のバラ小売価格は374円。上昇しているかに見えますが、毎月の推移などを調べると上昇傾向にないことがわかります。なかなか小売価格への転嫁というのは難しいのだと思います。
次に、生産コストはどうなのか。農水省の調査に農業物価指数というものがあります、農産物の取引価格を指数化して前年や基準となる年と比較する資料です。その資料では取引される価格と資材や光熱動力費などのコストにあたる部分の調査もしております。その資料の2022年3月のデータのうち、農業生産資材の指数を見ると、前年同月比で7%以上アップしている、肥料で11.5%、光熱動力費では21.9%アップしているとあります。バラ切花の生産では燃料費がコストのうちおおよそ30%を占めています。(「農水の花きをめぐる情勢最新版」より数字を丸めて引用しました)
さて卸売価格の上昇分でコスト上昇が吸収されているのでしょうか。計算を簡単にするためにバラの生産コストを仮に一本あたり100円としましょう。すると燃料費は30円となります。上昇が+21.9%ですから、6.6円アップとなります。つまり燃料費アップした分だけ107円でバラの生産がとんとんになるというのが今年の状況で、肥料その他を加えると10円はくだらないだろうと思われます。
さて、さきほどの都内市場の卸売価格にもどりますが、3月の切花バラの平均卸売価格が131円から143円と12円アップしたところですが、果たしてこのようなコストアップ分を全て回収できたのでしょうか・・・。更に生花店さんの小売価格はどうでしょうか。店頭小売価格は据え置きのような印象を持ちますし、また総務省の統計データでも上がったような感じがありません。葬祭業におかれまして2022年年頭頃から供花を中心に価格改定という、これはグーグル検索でちらみしたところですが、ご案内が増えてきたようですが・・・。全部を上昇とはいっていない現状かと思います。時事通信5月31日のデジタル版のニュースに、食品については今年の値上げが1万品目にも及ぶもようという記事があります。
追伸 6月に入り肥料の値上げとその対応策についての論説が増えています。
花き商品においても適正に値上げと、また商品の魅力を一層伝えてゆくことで満足いただける体験を提供すべきかなあと思われました。そういう体験型というところで考えますと、ユリのように開花する、香りが漂うという個性は魅力的なポイントだろうと思われます。さわさわとした草花の人気が高い一方で飾っているうちに変化する商品にも注目したいですね。
写真はマドンナリリーです。3月に開花株を手に入れて水をやり続ける事2か月、にょきにょきと伸びる茎に花がついてこのところの陽気でかように咲いたわけです。
それではみなさま、ごきげんよう。