花研コーヒーブレイク
消費者の皆さまへ:花瓶の水は毎日替える必要はありません
2012.07.06
6月30日付け日本経済新聞 NIKKEI PLUS1の「花を気軽に飾りたい」コーナーをご覧になっただろうか。
前回のブログに引き続き、またもやメディアによる間違った情報発信。
記事の最後に以下の通り記載されている。
「花を買うと活性剤という切り花を長持ちさせる液材(「剤」では?あ、もしかして誤植??)をつけてくれるところがあるが、これは水中のバクテリアを減らすためのものだ。“漂白剤を1滴程度加えれば代用できます。水は必ず毎日変えてください”」
過日もNHKの番組で某老舗花店さんが、「水は毎日替えてください。できればよく切れるナイフもご準備を」と。
誇り高き老舗高級花店だからこそ、このご発言、ごもっともかと思う。
しかし、翻って一般的な家庭を鑑みればどこでも「花用のよく切れるナイフ」など準備できるものではないし、準備したとしても正しい使い方が分からなければ、アブナイ凶器になる。毎日水を取り換える面倒と、良く切れるナイフの必要性を思えば、花文化は一般の方にとってはとても敷居の高い物になってしまい、誰でも楽しめる代物ではなくなる。
本当に花を買ったら水を毎日取り換えなければならないのだろうか。市販の栄養剤を使えば、毎日取り換える必要はないという当社の認識は間違っていたのか。あるいは都市伝説だったのか。真実を伺うため、宇田花づくり研究所代表の宇田明先生に伺ってみた。
以下、ナントわかりやすいご回答。
「1.漂白剤は塩素です。
殺菌効果があります。水道の水の殺菌は塩素です。
水道水=塩素水です。
では、水道水に殺菌力があるか?
ありません。それは塩素の効果が短いからです。
水道水で金魚を飼う場合、水道水そのままでは死んでしまいます。
(ではなぜ人間は水道水を飲んでも死なないのか?体重当たりの摂取塩素量が違うから)
水道水を1晩くみ置きすると金魚を飼える=塩素が消滅。
従って、漂白剤の殺菌効果も持続しない。だから、花びんの水を毎日交換しなければならないと小売店さんは言う。
2.市販の延命剤(鮮度保持剤)
殺菌剤+砂糖+界面活性剤
花びんの水の腐敗を防ぎ、つぼみの開花を助け、花が大きく、花色が鮮やかに咲く。水あげもよい。
私の結論:延命剤に勝る日持ち延長技術なし
3.お客様の手を煩わさない
これが商いの鉄則と思います。そのためには延命剤(活力剤、栄養剤、名前はいろいろ)が必要。
消費者は、日持ちの延長よりも、花びんの水が腐らないことを望んでいる。
延命剤は水替え必要なし。水が腐らない。
漂白剤は中途半端でお客様に親切でもない」
また、市販の栄養剤には水を腐らせない殺菌剤だけでなく、糖分が入っている。ここがポイントでこの糖分が花の栄養になり、最後まで美しく咲かせることができる。
花は地面に植わった状態であれば地面から栄養を吸い上げ最後まできれいに咲くが、それを途中で切ってしまうため、栄養元を失う。その状態から最後まで咲くには、やはり人工的に栄養を与えることが必要なのだ。それも栄養剤を加える大きな意義のひとつ。漂白剤や水を交換するだけでは花を最後まで咲かせることはできない。
「じゃ、糖分が必要なら砂糖でも入れっか」とプラスしたところで市販の栄養剤にはかなわない。栄養剤は殺菌剤と栄養のバランスが研究し尽くされた完成度の高い物なのだ。 漂白剤1滴、砂糖少々などと料理レシピのように対処しても(漂白剤を入れるレシピなどないが)、栄養剤と同じようには機能しない。これはもう邪道の極み。業界のマイナスプロモーションに他ならない。
この日経の記事のテーマである「花を気軽に飾りたい」というのであれば栄養剤は最強ツール。むしろマストアイテム。
大手のメディアを使って一気に世間に広まった間違った認識に対し、私たちは時間をかけて地道にコツコツと軌道修正を積み重ねていかなければならない。