花研コーヒーブレイク
2019年ラグビーワールドカップ 日本開催
2009.09.17
当研究所には、ラグビーが本業で研究所がサイドビジネスかと思わせるほどラグビーに人生を捧げているラグビーおじさんがいます。・・・あ、ラグビーお兄さんかな。いやいや、ラガーマンていうのか。(但し、ラグビー関係では収入を得ていませんので、念のため)
2019年、ついにラグビーのワールドカップが日本で開催されることが決定しました。
そのラグビーおじさんが最初にコーチをした生徒さんが今高校2年生だそうで、10年後の開催期にはちょうど戦力としてメンバーに選別される頃なので、是非桜のジャージ(日本のユニフォームの胸には桜のマークが付いている)を着て欲しいと願っているようです。
以下、日本開催決定にちなんで、そのラグビーおじさん・・・いやいや、当社の主任研究員の話です。
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ラグビーのルールは
① 前にパスをしてはいけない
② ボールより前にいてはいけない
キックはどこに蹴ってもOKですが、味方はボールより前にいることはできないので、敵に取られる可能性が大きくなるわけです。
・・・どうして英国人はこのような面倒なルールをあえて作ったのでしょうか?と主任研究員に聞いてみると
「ラグビーは知的スポーツだからだよ。難しい壁を作って、それをいかに戦略的にクリアしていくかが勝負なんだ。」
と教えてくれました。しかも図解で!そういえば、同じく英国発のスポーツのクリケットは理解できないほどルールが複雑だ(+_+)。同郷のテニスやゴルフは比較的わかりやすいですが。
話はラグビーに戻りますが、前に投げられないのに、前方のインゴール(トライするエリア)へボールを運ぶという矛盾を攻略することにラグビーの醍醐味があります。
戦略はいたって簡単です。
① 前にいる相手を力づくで押し倒して進む
② 15人いる相手を一か所に集中させ、相手がいなくなったところを走り抜ける
③ 相手の力のベクトルが小さいところに味方の力を集中させる
④ 相手の隙間を走り抜ける
①の力技は相手との差がないとできません。力といっても運動エネルギー(E=V2乗/2)が大きければ強いことになりますので、体重が重く、スピードのあるティームに使える戦略です。
②については通常15人対15人で試合を行いますので、自分の目の前には敵がいるはずです。しかし、ボールを確保し続けながら、右へ左へ動くことで、敵が一か所に集まるようになります。ボールを持った味方に敵2人がタックルに行けば、味方の誰かに対する敵がいないことになります。これを何回も繰り返することで、次第に敵が一か所に集まり、そこを見計らって一気に敵がいない遠くへボールを動かし(運び)、前に走る戦略です。これは、敵が固まるまでボールを確保しておかなければならないため、体力とボールの奪い合いの技術が必要となります。
③は1対1がだめなら、集団で攻撃しようというものです。
ボールの奪い合いの際には、4人から10人くらいで固まってボールを運ぶのですが、当然敵も同じ人数で対抗してきます。ベクトルの大きさが揃い、向きが全くの反対方向であれば動かないことになりますが、ベクトルの向きを少しずらすことで前に進むことができます。但し、個人競技と違い、これも相手との力が均衡している場合でなければ通用しません。例えば、味方が10人で押す力に対して相手は8人で対抗できれば、ベクトルをずらしてもすぐに対応されてしまいます。ましてやベクトルの大きさがそろってしまったときにはボールを持っている(確保している)にも関わらず、押されてしまう結果となります。
④は味方と相手は1対1で揃っていますが、ボールを持って自分の相手と隣の相手の間を走り抜こうとするとき、相手はボールを持っている人に2人がかりで捕まえにくる瞬間があります。その瞬間に隣の人にパスすることで、隣の味方の前には敵がいなくなり、走り抜けることができるようになります。但し、トップクラスになれば1対1を崩すことなど滅多にありません。そこで1対1で抜くことを考えます。
ラグビー選手も足が速いに越したことはありませんが、敵と敵の間を広く空けることができ、且つ自分の相手がコンマ何秒かでお自分の動きに遅れてくれるようにすれば敵を抜き去ることができます。少なくとも敵の背中側に出た瞬間、隣の味方が走り込んでくればパスすることで味方がフリーになります。敵の背中側に出るということは、敵は振り向いてから走り出すために加速度を一度ゼロにする、もしくは速度を保ちながら遠回りしなければなりませんので、通常は追いつけません。この隙間をギャップを呼びますが、ギャップを作るには参加プレイヤー全員が1人の味方にトライさせるための戦術(お仕事)をキッチリとこなさなければなりません。1人でも意識が違うと戦力も総合力も低下し、敵が騙されてくれなくなります。
ワールドカップホスト国の日本として、開催まで実力の底上げが一つの課題となっていますが、対戦相手に合わせて上記4つの戦略を駆使し、勝利を掴んでほしいところです。
とりわけ日本の強みは低いタックルとスピードあるパス技術であり、それは世界に通じるとさえ言われています。防御ラインを崩さず、逆に味方全員の動きで相手を惑わし、少しでも敵にギャップを作らせることで勝機を見出してほしいと思います。
ちなみに、時の人第93代首相の鳩山さんの出身高校である小石川高校は、都立高校の中でもラグビーが強い高校なのだとか。