花研コーヒーブレイク
「スイートピーの日」はなぜ1月21日なのか
2019.01.28
生産者さん自ら立ち上げた「日本スイートピーの会」が制定した「1月21日スイートピーの日」。
1月21日である理由は、花弁の構成が1-2-1となっているからですが、本当にスイートピーの花弁は1-2-1なのか、ご覧になったことはありますか。
みなさんの「不思議」がとけますよう、鑑賞期間がほぼ終わりのスイートピーを用い、花を分解してみました。
するとこのように分かれました。(↓写真)
スイートピーの背中部分の最も大きな花弁を旗弁(きべん)といい、これが1枚、左右に分かれるフリフリとした翼弁(よくべん)2枚、そして正面から見ると隠れているようですが、よく見ると竜骨弁(りゅうこうつべん、別名舟弁)と呼ばれる花弁が1枚あり(※)、これが1-2-1の由来となっているのです。
・・・以下、大事です↓・・・
※スイートピーの花はマメ科に特徴的な蝶形花冠(ちょうけいかん)で、植物学的には旗弁1枚、翼弁2枚、竜骨弁2枚です。
しかし、スイートピーは2枚が合着して1枚の形になっているため、分解すると1-2-1に見えます。そのため、園芸的には1枚として捉える場合もあり、スイートピーの日の制定に関しては、こちら1-2-1を採用いたしました。他のマメ科の花も分解して、花の構造を比べてみると面白いかもしれません。
・・・大事な部分終了・・・
花弁の名前もよくできたものです。
旗弁は花の背後で旗を立てたように立つ最も大きい花弁。英語でもbanner といいますが、bannerとはあの「バナー」のこと。今はIT用語としての方が浸透していますが、もともとは国旗や軍旗の意味です。
左右両側に広がった翼弁もまさに翼のよう。英語でもwing petalといい、そのまま。もしくはダンボの耳のようなので、ダンボ弁でもいいかもしれませんが、濁点が多くて言いにくいのと、響きがあまりかっこよくないのと、著作上問題がありそうなので、却下でしょう。
竜骨弁の「竜骨」とは、船の底の中心線で、船首から船尾へ貫く主要部材のこと。花弁の形を舟底の竜骨に見立て竜骨弁と名付けられました。竜骨のことを英語でkeelといいますが、竜骨弁のことを英語でもそのままkeel petalと呼びます。
また、船の形に似ていることから舟弁とも呼ばれますが、いずれもまさに言い得て妙ですね。
竜骨弁には雌蕊と雄蕊が入っていて、ここからタネの鞘が出てきます。
←竜骨弁の中に雄蕊と雌蕊
ご家庭でスイートピーを楽しんだ後も、花弁が全て落ちて、タネの鞘ができることがありますので、もし可能であれば、花期が終わってからも暫く様子を見ていても面白いかもしれません。
←ちょうど鞘ができ始めたところ。
花弁が全て落ちて、鞘がさらに大きくなったサンプルがありましたが、通りがかりの旅人に差し上げてしまいました。ぜひ皆様も観察してみてください。
花好きの方には、花を分解してみるというのは少し気が引けるかもしれませんが、分解して花の構造を知ることも学びの一つだと思います。
ということで、なぜ1月21日がスイートピーの日か、ご理解いただけたものと存じます。
ちなみに、偶然にも1月21日は昭和の名曲「赤いスイートピー」のリリース日でもあり、また1月21日前後にスイーピーが出荷のピークを迎えることもあり、1月21日がスイートピーの日というのは、あらゆる点から得心のいく記念日だなーと思います。
また、1月27日は全国でも大産地の一つである岡山県船穂(ふなお)町の「船穂スイートピー記念日」です。
「いいふなお」の語呂に1.27をかけているのだそうです。「スイートピーの日」より数年先駆け、記念日登録をされています。