花研コーヒーブレイク
ノルウェーのフローリストの繁忙期
2011.08.15
ノルウェーのお花屋さんが花が良く売れ、忙しく、在庫は空っぽだという。
フローラホランドのニューズレター(No.17)に載っていた記事である。
以前小欄でも触れたことがあったが、7月のテロ後の追悼式で行われたのは”Rose March”(直訳すると「バラの行進」)。
人口はおよそ500万人のうち10万人が手にバラを持ってこの行進に参加したとされる。オスロ市街は街灯やら信号までが花に埋め尽くされ、オスロ大聖堂の前には追悼キャンドルと花のカーペットが広がったという。
テロ以降、膨大な量の花が売れており、オスロ大聖堂の向かいにあるフローリストは、
「昨日は仕入れたバラが全て売れてしまい、後から卸店にもう一度仕入れに行ったよ」
と言っていた。フローリストたちは利益後回しで一生懸命販売しているという。ノルウェー政府は暫定的に花の輸入制限値を引き上げ、突然増えた花の需要に対応している。
ノルウェーの追悼式に使われていた赤バラに疑問を抱いてからというもの最近なんだか北欧づいているが、ノルウェーの花文化について以前ノルウェー在住8年のAさんに事情をお伺いしたことがあったので、以下に記してみる。Aさんは幼いころから日本で生け花に親しみ、今でも室内の花は欠かさないという。そのようなAさんが観察したノルウェーの花事情である。
ノルウェーでは夏になると小さな女の子たちは野原で花束を作るのだそうで、なんとも物語に出てきそうな光景が目に浮かぶ。たまに男の子も一緒に野に咲く花を摘んだりしているので、小さいときからこのようなことが生活に根ざしているのかもしれない。しかし、花屋で販売している花の種類は少ない。
その理由は、ノルウェーは人口が少ないことが一つではないかとAさんは推測している。そして2つ目の理由が国民性にもよるもの。日本人なら花が10種類とすると、その内容が少なくとも毎週変化してほしいと願い、色も形も何パターンあっても当然くらいに思ってしまうが、ノルウェー人は同じものであっても常に10種類あることが重要で、10種類あればたとえ毎週同じ品揃えでも満足する。
数年前の新聞記事によると、80%ノルウェー人がスーパーの品揃えに満足しているが、ノルウェーは北欧(デンマーク、スウェーデン、フィンランド、アイスランド、ノルウェー)で最低の品揃えという結果だった。これは自国民にとってもなかなか面白い調査結果である。
Aさんからの情報によると、ノルウェーは税金が高く、外食の頻度は日本人より少ない。友達と会うときはカフェは多いが、レストランではなくホームパーティーをする。そのときによく花束やワインを持って行くので、結果的には日本より花束を買う機会も多いかもしれない。
そしてノルウェー人(北欧全体)は冬が長く暗く寒いので、必然的に家で過ごすことが多くなる。そのためみんな家にお金をかけ、インテリアにも気を使う。造花が窓際を飾ることが多い。
また、ノルウェーでは家の売買をするときに、売る側は見栄えを良くする為に必ず花を飾るよう不動産屋さんに言われる。多いのは鉢植えの胡蝶蘭や切り花で大量のバラやチューリップなど。あまり服のセンスが良くない方の家に遊びに行っても、お宅はとてもセンス良くきれいだったりする・・・(!)
価格は例えばスーパーでチューリップ7本で約480円。しかしこれは安売り価格。しかし安売りに手を付けると花保ちが悪く3日くらい、長くても1週間くらいで買い替えることになる。気温が低い分、もう少し持ってもよさそうなのに。Aさんはガーベラ、アリストロメリア、時々カーネーション、フリージアかキク、安かったらチューリップの繰り返し買うとのこと。
花はガソリンスタンドでも売っている。花屋もチェーン店が多く、個人経営は少ないし、よく経営破綻している様子を見るという。
ノルウェーの花屋は葬儀屋さんと提携している。日本のように「お葬式には菊の花」という定型はなく、赤いバラでもOKで白の場合もあるが、基本的には何色でもいい。従って余った花を葬儀用に回すこともあるらしく、なかなか効率的である。