花研コーヒーブレイク
花を詠った古典 “ホオズキ”
2011.06.30
東京で迎える7月の盆のことを「東京盆」と呼んだりますが、七夕から1週間すると今度は盆です。地域によっては七夕にお墓の掃除など盆を迎える準備をするところもあります。七夕は祖先を迎える盆と繋がる盆迎えの意味もありました。盆棚を作るのに竹を使うことからも、そのことが伺えます。
さて、その盆に欠かせない花材といえばホオズキです。漢字で「鬼灯」と書き、読んで字の如く、夜道を照らす灯りのような色形をしています。盆にお迎えするご先祖様が、行き帰りの道で迷子にならないよう照らすために、盆棚にはホオズキを飾ることが慣例になっています。
そこでホオズキを詠った古典のお話です。
ホオズキが出てくる最も古い書物は『古事記』のようです。ホオズキは「酸漿」と書かれることもありますが、ヤマタノオロチの目に例えられ、「酸漿」と書いて「アカガチ」と言われていました。
『日本書紀』神代下では、猿田彦大神のことを、
「目は八咫鏡(やたのかがみ)の如くして、赩然(てりかがやけること)赤酸漿(アカガチ)に似(の)れり」
と述べています。
いずれも眼光の鋭さを、赤い酸漿に喩えています。
一方、女性の容姿を例えるのにホオズキが引用されることもあります。
源氏物語の「酸漿などいふめるやうにふくらかにて」とは、玉鬘(たまかずら)の豊かかな頬を、ホオズキに喩えています。
ちあみに実の外皮まで赤くなるホオズキを栽培し始めたのは江戸時代。
「籠かばふ 鬼灯市の 宵の雨」 水原秋桜子
今年の浅草寺の鬼灯市は7月9,10日です。