花研コーヒーブレイク
4月12日オイコノミアは盆栽の経済学でした
2017.04.13
NHK(Eテレ)で放送される経済学番組「オイコノミア」は、先週の植物の経済学に引き続き、今週の放送は「盆栽の経済学」でした。植物を扱うという点で共通項のある花き市場といえども、盆栽は全く別の世界。花き市場にも盆栽の流通はないわけではありませんが、本来の評価方法における盆栽はほぼ流通していないに等しいでしょう。そこで、盆栽の世界の勉強も含め番組を拝見いたしました。
盆栽の経済を紐解くキーワードもたくさん飛び出してきました。
最初のキーワードは「集積の経済」。
同じ業種なら、たとえライバルとなっても同業者同士が集まっていた方が集客力があるということです。秋葉原の電気街、目黒の家具店の集まりなどがそれにあたりますね。ライバルがいるからとその集合体から離れた場所に出店すると、逆に集客に苦労してしまうわけです。盆栽なら盆栽村(さいたま市北区盆栽町)もまたそのケースに当たります。そもそもは関東大震災で被災した小石川周辺の盆栽業者さんたちがそこに移住して盆栽村ができたのだそうです。
「イケア効果」というキーワードも登場しました。
実際に盆栽を作ってみた又吉さん。・・・とパンクブーブーというお笑いの人。
自分で作った盆栽をいくらだったら他人に売りますか?という質問に、二人とも安価にはなかなか手放したくない様子。盆栽の元になる樹木の原価が6,000円くらいだそうで、では6,000円でくださいと言った経済学者の安藤さんに、かなり渋めの回答をされていました。それはそうですよね。人生で最初に自ら手掛けた盆栽ですから。
これを「イケア効果」というそうです。自分で手掛けたものは愛着が湧いて、価値が増すという意味です。スウェーデンの家具メーカー「イケア」からきているのですが、イケアの購入者が自分たちで家具を組み立てるというビジネス方式からこのように命名されたようです。
ちなみにこちらは「日暮し」という名前の日本で最も高価で有名な盆栽なのだそうです。(大宮盆栽美術館保管)
その評価額は1億3,800万円。(だったかな)
樹齢450年ほど。価値を決めるポイントは、樹齢や見た目ばかりではなく、「所有歴」というのも含まれるのだそうです。
例えばこの「日暮し」は、元首相の岸信介氏や佐藤栄作氏が所有していたのだとか。このような“盆栽の経歴”というのも価値を高めるポイントなのだそうです。
このような評価の点において、市場流通とは全く異なる性質といっていいでしょう。盆栽は同一規格のものが大量に出回る市場流通とは一線を画す商品ですね。
「日暮し」は日ごろ一般公開されていないそうですが、4月28日からの世界盆栽大会inさいたまではお披露目されるそうです。ご興味のある方は一目拝見するチャンスですね。
昭和期に盆栽ブームも紹介されていました。とりわけ昭和30-40年代には空前のサツキ盆栽ブームが訪れました。このブームに対して「バンドワゴン効果」という経済用語が登場しました。
多く人に受け入れられていたり、流行しているという情報が流れることで、その選択への支持が一層強くなることだそうですが、盆栽も流行っているという情報が流れることでさらに盆栽ブームの傾向が強くなるということです。
実は、アタクシも小さいころの記憶があります。実家の裏庭は塀伝いにずらりと3段になったサツキ盆栽が並べられていました。季節になると父親が1日中剪定しては、切った芽を挿して新しいサツキ盆栽を作っていました。アタクシも挿し芽をした覚えがあります。その時は純粋に親の趣味だと思っていましたが、実は空前のブームが到来していたのですね。
(今はありません。いつの間にか消えていました)
このブームが続かなかったのは、世代交代・世代継承がうまくいかなかったからと番組では言っていました。若い人を取り込めず、趣味にしていた人は年を取るばかりで盆栽はお年寄りの趣味という印象が付いてしまったと。サザエさんの波平さんが盆栽好きであるように。
最後はこの話に続き、「ところが今、新しい人たちによって盆栽文化が支えられている」と。
海外の方に向けた輸出も然り。↓盆栽の輸出が増えているグラフ(番組のデータ)
あるいは、日本に滞在する外国の方や日本人でも若い方が音楽との融合でライブ盆栽を行ったりと、盆栽に関する新しい文化の芽が芽生え始めているのだそうです。
これも盆栽業界のみなさまのご尽力があったからこそですね。世界盆栽大会も盛り上がることでしょうなることでしょう。世界盆栽大会は4月28日-30日、さいたまスーパーアリーナをメイン会場に開催されます。詳細はこちらをクリック。