花研コーヒーブレイク
台風の日に花を買う
2016.08.23
生花売場は全国に何万とあるのに、いざ花を買おうと思うときに意外と出合えないことがある。
例えば昨日。
台風だったが、17時から初めてお会いする業界外の方とのお打合せにS町に赴く。場所は、農産物を販売されるお相手の方のショップCにて。お店を開けながらのお打ち合わせなので、台風襲来はお客様が少なく、もしかしたらむしろ好機と、予定をずらさず強行することにした。
お手土産として花をお持ちしようと思ったのだが何しろあの台風。現地での調達を目論みた。C店至近に、都心のある有名な生花店さまで修業され、昨年9月独立開業された生花店Lさんがあることを知り、そこに行ってみたかったということもあった。C店とそのL生花店は今年の母の日にはコラボ商品を販売していたようで、L店で買えば間違いないだろうと踏んだ。
ところが・・・L生花店に行ってみると、なんと夏休み中で営業していなかったのだ\(◎o◎)/。ほとんど役に立たない傘を片手に大荷物を両脇に抱え、店前に呆然と立ち尽くすアタシ。
←昨日は青いワンピース着用で、まさにこんな感じ(笑)どろくさー
雨も汗も涙もよだれもあったものではない。事前にL店のホームページを拝見していたが、見落としてしまったか。少なくともトップページに休業のお知らせはなかった。
そこで、駅からL店に行くまでに1店生花店があったなと思い、踵を返しその生花店に小走りで戻ってみる。
しかし、さっきまで開いていたお店には、なんとしっかりとシャッターが閉まっていた(*_*;ガーン・・・ここでも生花店の女神さまは微笑んではくれなかったのだ。
この悪天候では客足は見込めないと早めに閉めたか、そもそも定時が17時でクローズしたか。ま、前者かな。
待ち合わせ時刻は迫るわ、非情な風雨は頬を差すわ、しかし諦めず駅周辺を小走りに一周し、生花店がないかざざっとスキャンして回る。
・・・が、ない。
小売店舗が見当たらない。
グルグルと回っているうちに、一度だいぶ駅から離れてしまったのだが、その一角に仏花取扱いのF生花店があった。ギフト用の生花店さまではないことを認識しつつも、最後の切り札と思っていたが、意を決してそこに駆け込んだ。
しかし、やはりそこは地元のお寺さんの需要中心に展開する生花店。ギフト向きの品種は少なく、淡いピンクのナデシコだけのシンプルな束を注文させていただいた。
店主はおもむろに数本花瓶から取り出し、どう“組む”わけでもなく、手に取ったまま切り戻しもせず、物花のようにセロファン、おまけのその上から店名がプリントされた包装紙を巻いて客に渡した。
・・・ええ、ええ、もちろん言いましたよ。「お使い物にしたいんです」「人に差し上げたいんです」「リボンを付けてもらってもいいですか」(店内にリボンがあったから)。
それでもなお、残念ながらリボンを付けてくれることはなかった。アタクシの伝え方が悪かったか、むしろ早くお店を閉めたいというところに、ずぶ濡れのパッとしないヤツが「花をください」なんて、厄介払いしたいくらだったのかもしれない。さらにそのお店は大雨時独特の、昔の家屋ながらの下水問題を抱えているようだった。
待ち時間はそれほど長くなかったはずかったはずだが、追い詰められたアタシには、ずいぶんと長く感じられた。
自分の用意が足りなかったのが大きな敗因だが、花を買うというだけの行為にのにこれほど困ったことはない。待ち合わせに向かう足が重く感じられたのは、靴が雨を含んだからだけではないだろう。
台風の日に花を買うという一般的な行動基準とは外れたことをしようとしたのがいけなかったかもしれない。“今日、花が必要である”と花に固執してしまった。F生花店の相向かいには高級フルーツ店のS屋さまも店を構えていたのだから、状況に応じて臨機応変に対応する柔軟性がアタシには必要だったのか。
あるいは、個人商店形態が殆どという業界の産業構造の弱みが露わになった瞬間といえるのではないか。L生花店、シャッター生花店、F生花店、どの店にも非はない、もしくは小さいにもかかわらず、ちょっとした手土産にしたい花を欲しいと思っている客のニーズを満たすことができなかったのは、この産業がゆえの問題を多分に含んでいるのだろう。
なんだかいろいろ考えさせられた買い物だった。