OPERATIONAL PERFORMANCE花研コーヒーブレイク

リオ五輪でビクトリーブーケがないこと

2016.08.18

実は、個人的にはリオ五輪でビクトリーブーケがないことはあまり気にしていません。

注目していただけに最初は驚きましたが、メダリスト以外の外野がとやかく言うことでもないと思っています。メダリストたちがビクトリーブーケがあったらいいねとおっしゃるなら話は別ですが、基本的には主催国のポリシーを尊重すべきと考えます。ビクトリーブーケはIOCのプロトコルガイドにないことを知り、開催国の自由と理解した以上、またブラジルがオリンピックを通してどのようなメッセージを発信しているか、なぜビクトリーブーケを採用しなかったか理由を知ってからはなおさらです。

それより、個人的に注目株であったテニスが終わったといえども、行く末が気になる競技がたくさんあり、寝ても覚めても気もそぞろです^ ^;

 

とはいえ、少し話題になっているようなのでビクトリーブーケがなかったことについて、一点だけ花研ブロガー2号が思うことを書かせていただこうと思います。

 

五輪憲章にサステイナビリティ(持続可能性)とあるように、それを実現すべく今回のリオ五輪でブラジルから世界へのメッセージの一つは「環境保護」。だからこそ開会式で植物の種を選手たちに配り、将来の「アスリートフォレスト」を作るという企画があるわったわけです。

メダリストに渡される副賞が花ではなかったのも、実はこのメッセージに関係します。

今回のリオ五輪開催で、19,000トンのゴミ排出を試算しているようですが、これはリオの630万人の住民が1年間に出すゴミの5倍に相当するといいます。サステイナビリティを目指すブラジルとしては、ゴミ軽減の意味も込めて今回の表彰式のスタイルを選びました。

考えてみれば、切り花はどんなに長持ちしたとしても、植物検疫の関係で選手たちは自国に持ち帰れませんから、最終的に国内でゴミ扱いされるのは必至です。「う~ッ、またここでゴミが増える~!!」と思われたかもしれません。

リオ五輪のロゴマークを3D化したこのオブジェなら・・・ん?ナニでできてんダロ。

あるサイトによると木でできているようです。(ニューヨークタイムズでは樹脂やポリ塩化ビニールでできているとしているそうです。とするとこちらの方がゴミになりそうですが、ま、いろいろご事情があるのでしょう)

メダルについても然り。リオ五輪のメダル発行数は合計2,500個(金812、銀812、銅864)。実はこれらについてもサステイナビリティを考えて作られています。金メダルは環境汚染が問題となる水銀を使わずに精製したもの。銀メダルと銅メダルは、リサイクル原料を30%使用。メダルを首から下げるためのカラフルなリボンは、部分的にペットボトルをリサイクルした原料から作られているのだそうです。

詳細はこちらからご覧ください↓

■8月18日 Yahoo!JAPANニュース(日本語)

http://bylines.news.yahoo.co.jp/inosehijiri/20160818-00061241

■8月13日 Mashable Asiaニュース(英語)

http://mashable.com/2016/08/12/no-flowers-at-rio-olympics/#PqodZ90vJPqq

 

このように、表彰式のスタイルは五輪憲章に掲げられたサステイナビリティと、環境保護を目指すブラジルの選択だったのです。

ビクトリーブーケを採用しないことは、地球の裏側の日本の花き業界にとっては驚くべきことだったかもしれませんが、ブラジルからすればポリシー全体の中から表れた一部分にすぎないのです。

 

 

しかし、ここで思うのは、切り花授与、つまり生産や消費が環境保護にならないというなら、私たちが日ごろ米やジャガイモ、ピーマン、ホウレンソウ、養殖ブリ、何にしても、これらを食べることが環境保護になっていないというのと同じです。胃袋に消えるといっても必ず残り・ゴミは出ます。圃場で作るもののうち、食糧は選手村の食堂で提供しても、花はアスリートに贈れないというのは甚だ矛盾を感じます。

「いただきます」というのは、食糧が食卓に上がるまでに携わった全ての人に感謝し、「その食物の命をいただきます」からきているといいます。食糧は口から体内に取り込み体の栄養となりますが、切り花は(鉢物も)目で楽しみ心(脳、延いては身体)の栄養になります。実際に、花き類が脳機能に良い効果をもたらすことが、世界各地多くの医学博士によって証明されています。それでも切り花はゴミとして扱われるものでしょうか。だとしたら食物も同じことでしょう。

農場で作られたものが環境破壊というなら、毎日サプリメントやカップラーメンで生きていきますか?その方が環境保護になると本当に思いますか?花もそれと同じことではないでしょうか。

 

それぞれのポリシーで切り花を使わないのはいいでしょう。

しかし、切り花を使わないことは環境保護にならないこと、環境保護を目指して、農産物の中で切り花ばかりがゴミ扱いされて切り捨てられることはあまりにもナンセンスであることを認識してほしいところです。

あ、cut flowers(切り花)だからThey cut flowers.・・・だったりして^ ^;

お後がよろしいようで。これまた失礼いたしましたッ!

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