花研コーヒーブレイク
真夏の東京五輪でビクトリーブーケの花を供給するのは困難なのか
2016.08.10
テレビのニュース番組、その他個人的な質問も合わせ、真夏に開催する東京五輪でビクトリーブーケを何千個も用意するのは、供給がそもそも難しいのではないかという話を耳にします。
結論から先に申し上げれば、供給量、品目品種の多彩性からいっても、全く問題ありません。
ブラジルでは難しかったかもしれませんが、花き生産が盛んな日本は別です。たとえ真夏であったとしてもです。
業界の方にとっては「シャカセツ」(釈迦に説法)となりますが、以下になぜ問題ないのか検証してみたいと思います。
その①でオリパラのビクトリーブーケで必要な必要な花材数を計算し、
その②で日本国内で流通している花材数量を計算します。
①≧②なら供給が難しく、①<②であれば供給可能となるわけです。
その①「東京オリパラでどのくらいビクトリーブーケの花材が必要か試算してみる」
ロンドン五輪が26競技302種、パラリンピックが20競技503種、ビクトリーブーケの制作数は4,400個といいます。
東京五輪では33競技、パラリンピックが22競技と決まったようなので、競技数の単純計算でいけば120%増。
4,400個の120%といえば5,280個が必要になると試算されます。
1個のブーケに使われる花材数について、ロンドンの時はバラだけで12本、そのほかラベンダーや麦、ローズマリー、アップルミントなどが使われていましたので、それぞれ3本ずつとしても、バラと合計で24本。この場ではこの数字を借りることにします。
5,280個×24本=126,720本、さらにロスを2割含んだとして15.2万本。
オリンピックの約2週間とパラリンピックの10日間のおよそ25日間で15.2万本がビクトリーブーケに使われたと計算することができます。・・・①
②「次に、日本でどのくらい切り花が流通しているかを計算してみる」
国内の切り花流通本数は年間約60億本。
1日の取引量にして約4,000万本です。
例えば、東京オリパラで国産切り花だけを使いたいというリクエストがあったとして、国産だけに限ったとしても3,000万本が1日の取引流通します。ギンギラギンにど暑い本日も然りです。・・・②
25日間で13万本の花材が必要(①)として、1日の取引量が3,000万本(②)。従って①<②。
オリパラのビクトリーブーケの供給が困難だと思いますか?
もちろんデザイナーさんにもいろいろ選んでいただける多彩な品目が流通しています。それは生花店の店頭に並ぶ花たちが証明しています。
オリパラで約13万本の切り花が消費されたとしても、生花店等には何ら影響がないくらい、日本には潤沢に花が流通しているのです。もちろん灼熱の夏でさえも。
みなさま、オリパラの花き供給に関しては何卒ご心配なきようお願いしたいと思います。
このようにビクトリーブーケの数量的インパクトは、生産・流通にとって大きいものではありません。花き業界として考えたいのはやはり、ビクトリーブーケに求められるものは社会的意義や世界に向けたメッセージはなにかということではないかと思います。
リオの開会式でアスリートフォレストに向けて植えられた樹木の種、バンクーバー冬季五輪で社会復帰を目指す女性によって作られたビクトリーブーケなど、内包する意味に重点を置いて花きがどのように使われるかが検討されるよう期待したいと思います。