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「コンクリートジャングルは人間の心を破壊する」byリー・クアンユー氏(シンガポール元首相)

2016.05.19

写真誌『NATIONAL GEOGRAPHIC』の2016年5月は「自然と人間」がテーマです。(詳細はこちらをクリック)

 

その中で紹介されているのが、シンガポール元首相リー・クワンユー氏の言葉、「コンクリートジャングルは人間の心を破壊する」。シンガポールは建国の時から“City in the Garden”(緑の中の街づくり)を目指し、緑化に力を入れています。単なる街の緑化であるGarden in the CityではなくCity in the Gardenであることがポイントです。

東京では、最近の商業施設にこそ心地良い緑化が施されていますが、それでも戦後はどちらかというと緑化より建設物を優先し、コンクリートジャングル化してきたことは否めません。これでは都市部で日常を送る人に“心が破壊される”ほどのストレスがかかるのはごく必然とも言えるでしょう。人工的な直線だけの世界では人は生きていけないとも聞いたことがあります。

(↓この写真はどう冷静に見てもまさにコンクリートジャングルですね。しかも日本のそれを象徴しているように見えます)

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ではなぜ人はそのように自らの心を破壊する環境を作ってしまったのでしょうか。自然の摂理に逆らうようなことをしているようにも思えますが、これが現代社会における進化・発展とのミスマッチなのだと思います。

例えば、人の進化の過程で見られるミスマッチはたくさんあります。

人類は二足歩行をするように進化しましたが、そのことによって腰痛や便秘という病気や症状を引き起こすようになりました。あるいは、自分を美しく見せたいと女性はハイヒールを履くようになりましたが、外反母趾や腰痛を引き起こすようになりました。飢餓に対応すべく、人の身体はエネルギーを貯蔵するしくみが発達しましたが、このことにより逆に肥満や糖尿病が劇的に増えてしまいました。

これらは、進化や快適性、生存確率の向上に伴う代償なのではないかと思うのです。

恐らく、コンクリートジャングルの中で私たちは、岩場を歩くことなくスムーズに歩行し、ある程度安全が確保された上で快適な都市生活を送っていますが、一方で強いストレスを受け、多くの人にとって最も大切な一つである心(つまり脳)の機能に変調をきたしているのではないでしょうか。つまり、快適な生活を手に入れた代償を払っているのです。

日常の快適性や社会の活性化を求めて進化しているように見えても、どこかで代償を払っている例は多いことでしょう。その代償に気付き、天秤にかけた上で豊かさを取るのはいいでしょう。しかし、代償の大きさに気付かずに選択をしていることがあるとしたら危険です。

何が豊かさであるか。コンクリートジャングルと化した都市部で今、代償を埋めるために人は生きた緑を必要としているのではないでしょうか。

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