花研コーヒーブレイク
7月盆と8月盆
2010.06.29
市場(いちば)は年間を通して暦に伴った物日の繁忙期があります。
7月の物日といえば七夕とお盆です。お盆といえば、7月盆と8月盆があることにお気づきの方は多いと思いますが、その理由をご存知でしょうか。
現在私たちが使う暦はご存知の通り「新暦」です。新暦とは、つまり太陽暦(グレゴリオ暦)のことで、太陽が地球を1周する日数を1年としています。
この太陽暦は 明治5年(1872年)に採用されました。それまでは日本は太陰太陽暦を採用していました。太陰太陽暦や太陰暦を合わせて「旧暦」といいます。太陰とは「月」を指します。太陽暦は地球が太陽の周りを1周する周期を基に作られているのに対し、太陰暦は月の満ち欠けを基準としています。
日本の古くからの伝統的な行事は、主に旧暦に基づいて作られました。
月は29日で地球を一周するので1カ月は29日、或いは30日、12カ月で354日にしかならず、実際の季節とずれてしまいます。
太陰暦は現在でもアラブ諸国などで使われていますが、これらの熱帯地域では、季節の移り変わりがあまりないので、問題がないのでしょう。しかし、日本のように季節の移り変わりがはっきりとしている所では、暦が表す日が実際の季節と1か月もずれてしまうことがあり、支障をきたしてしまいます。
この不便さを解消するために、中国に倣った太陰暦に閏年を挿入し調整した太陰太陽暦を取り入れました。(天保13年、1842年)
それ以降、太陽暦を採用するまでに日本の暦は10回も変わったそうです。太陽暦が採用されたことで、月日の流れと季節感のずれはなくなりました。しかし、日本の多くの年中行事は既に旧暦を基に作られていましたので、新暦では季節が合わないものがありました。
桃のお節供はその最たる例と言えるでしょう。旧暦の3月3日はちょうど桃が咲くころでしたが、現在の暦では自然の桃はまだ咲いていません。(流通している桃は室に入れて、開花を調整したものです)
お盆もその例の一つです。お盆の場合は「祖先の霊を迎える7月15日」という日付に意味のありますが、新暦でいいくと、7月15日は農繁期の真っ只中です。国民の大半を占めていた農民にとって、新暦の7月15日にお盆を迎えるというのは、大変なことでした。
もし、強引に7月15日にお盆を迎え続けようとしたら、もしかたら重陽の節供のように文化が廃れるという現象も起こりえたかもしれません。 だからといって、旧暦の7月15日にあたる新暦の日程(8月下旬ころから9月上旬)にすると、日付が全くずれてしまいます。
そこで苦肉の策として1ヶ月後の8月15日を「月遅れ盆」として行う地方が多くなったというわけです。但し、東京を中心とする大都市や、農繁期に重ならない東北地方などではそのまま7月15日に行っています。7月に迎えるお盆を「東京盆」と呼んだりするのは、そこに理由があったのですね。
最近思います。旧暦の中で自然の移り変わりを肌で感じながら、独自文化を積み上げてきた日本人ですが、新暦を取り入れてからも伝統を大切にしつつ、なぜクリスマスやハロウィンという(多くの人にとっての)異教の文化をすんなりと受け入れ、この時とばかり盛り上がることができるのか。日本人のどのような気質がこれほどまでにミックスカルチャーの定着を可能にしているのか。
元来農耕民族の日本人が、なぜ花をそれほどまでに愛でるのか・・・(それが現代においては、エスカレート?して、市場で花をご購入される花を生業とされている方の品質に対するこだわりは世界一レベル!)・・・それは、日本人が野に咲く花、またそこから得る情報を必要としていたからです。延いては「ハナ」の語源にも通じるものがありました。
最近はこのあたりのことについて得心がつくようになりました。
これらのお話はまたあとで♪