花研コーヒーブレイク
変わりゆく敬称
2015.08.05
NHKの語学テキストに大変興味深いコラムが書いてありました。
英語のMs.は未婚・既婚の区別なしにどのようなシーンでも使える敬称で、ビジネスにおいては重宝される敬称です。実際には、未婚の人・若い人に対しても、尊敬の思いからMrs.と呼ぶこともあります。それはリスペクトなので、カッコいい外国の男性にそう呼ばれたからといって落ち込む必要はありません。
Ms.が国連などの国際機関で正式に採用されるようになったのは1973年。
この敬称を使い問題を感じたことはありませんが、反対意見もあるようです。例えば、複数形のMses.の発音がMrs.と紛らわしいとか、米国でも地域によってはMrs.もMs.と同じように【miz】と発音するからだそうです。
(そう考えると、日本語の「さん」や「様」というのは、性別ばかりでなく年齢も関係なく誰にでも使えるのですから、使いやすくてよい敬称ですね。)
このような問題もあり、2015年5月に英英辞典のOxford English DictionaryへMx.という新しい敬称の掲載が発表されたのだとか。読み方は【miks】。
Mx.という敬称、勉強不足ながら初めて知りました。驚きです。
トランスジェンダーの方も決して珍しくない今、この敬称は男性にも女性にも使えるのだそうです。つまり、どちらの敬称でお呼びすればいいかわからない場合も、Mx.~と呼び掛ければ全く問題ないのです。
また、海外の名前は省略形にすると男性と女性の名前が同じになる場合があります。例えば、Alex。男性ではAlexanderをこのように略しますし、女性ではAlexandraがそうです。Alexという名前以外の情報がなく、どちらかわからない場合もMx.を使えば問題なし。
私はまだこの敬称に出合ったことがありませんが、実際英国では2013年以降、官公庁やパスポートなどの正式書類にも使われているそうです。
しかし、新しい言葉かと思いきや、実は1977年に米国の雑誌で既に使われているのだとか。
男女別、あるいは未婚・既婚別に用意された敬称が変わりゆくのは、社会の変化に適合した必然のことだと思っています。30年後、100年後、Mx.はどのくらい定着しているのでしょうか。もしくは、また新しい敬称が出てきている可能性もありますね。ライフスタイルが多様化したり、LGBT(性的マイノリティ)も決して珍しくない現在、何事もマジョリティがだけが市民権を得るという社会から脱出し始めているように思います。誰もが社会で正当に認められ尊重される社会になりつつある、その過程にあるのかもしれません。