OPERATIONAL PERFORMANCE花研コーヒーブレイク

ネーミングの秘密

2010.06.14

ある人から新しい品種のバラが出来たから名前を考えてほしいと依頼された。

 

実はこういう話も少なくないし、意外に嫌いではない。(中学の時から、友人のニックネームを付けるのが好きで、考えずにパッパとニックネームを付けて呼んでいた。今考えれば、良く定着したなと)

 

無意識のうちにそうしている方も多いだろうが、とりわけ花のネーミングの場合は考慮しなければならないポイントがいくつかある。

 まずは“サウンド”(響き)。これは花に限らず、何にネーミングする時もあてはまる。

ちょっとしたしたコツとして次のことを考慮すると、比較的人の頭に残りやすいと聞いたことがある。

・「あ」段(あかさたなはまやらわ)で始まる

・5文字(経験上6文字まではOKかと。但し、5文字がベスト)

・濁音を入れる 

 

大田花きでバラとして登録されている2,000以上もの品種名の中から、この条件にはまる品種名は意外と少ない。

その中でもいくつかはピタリと当てはまり、いくつかは3つの条件のうち2つは当てはまるなどのニアピンだったりするのだが、たまたま或るバラの品種名を見つけた。

「バレンシア」。

皆さんはこの品種名を聞いた時にどのような色を思い浮かべるだろうか。

あるところで講演したときに、「“バレンシア”というバラの色は何色だと思いますか」と前方に座っていた方に聞いてみたところ、

「オレンジ色」とお答えになった。

 

正解!実際、“バレンシア”というバラはオレンジ色である。

ネーミングとしては、名前が持つイメージと実際の商品が一致しやすい、そして人の記憶にも残りやすい成功例といえる。咲き方、輪の大きさも含めなんとなく花の様子を思い浮かべることができる。

お客様にとってとても覚えやすい名前だし、「オレンジのバラがほしい!」と思った時には優先的に注文してもらえるだろう。

(但し、花が売れる要因はネーミングだけではないので、このバレンシアが売れているかどうかは別問題)

 

実は花の業界では、なかなかそこまでうまいネーミング例は少ないように思う。

大田花きで登録されているバラの品種名を見ていても・・・見るだけでも10分はかかったか?・・・覚えやすく、色や形がなんとなくイメージできる名前の品種は本当に少ない。

海外から入ってくる品種も多く、日本の流通やマーケット事情が考慮されずに名前を付けられているということも多分にあるだろう。しかし、その流通形態などから、花のネーミングの場合は考慮しなければならない要素が多いように思う。

自分でネーミングできる機会がある場合は、単なる響きや印象のほかに、次のようなことを考慮するといいのではないだろうか。

 

  • 他品目で同じ、或いは似たような名前がないか(品目をまたいで同じ品種名だったりすることがままある)。
  • 同品目で似たような名前がないか。電話等の口頭注文の際に、間違って受注してしまう。
  •  名前が長くなったときに、どのように略されて呼ばれるかを想定する。(略された時に妙な響きになりそうな場合は、再考すべし!)
  • 色だけでなく、雰囲気―例えばバラだとしたら咲き方や輪サイズ、高級感、或いはカジュアル感など―をなんとなく想像できるものであるものが望ましい。
  • 例えばピンクのバラなら、幅広いピンク色の中で、そのバラのピンクをうまく伝えられるネーミングであるか。
  • シリーズで誕生した品種の場合、そのことを伝えるネーミングができているか。
  • 比較的しっかりとした芳香を放つ品種は、それを考慮してネーミングされているか。

   などなど。出された候補名を上記項目に照らし合わせて多角的に検証していくのもいいだろう。

 

 

また、ネーミングにも流行があることにお気づきだろうか。

一般論になるが、最近は、その経済背景、時代背景、或いは和への回帰傾向から、やわらかい日本語のサウンドを取り入れたもの、とりわけひらがなを使ったネーミングが多い。

りそな銀行、桃の天然水、めぐりズム、さいたま市、ふんわり食パン、い・ろ・は・すなどは比較的最近付けられた名前だ。

 同様に英語のような子音で終わる音よりも、日本語のように音が最後に付くイタリア語、スペイン語などラテン語系のネーミングが受け入れられやすくなっている。

VAIO;パソコン、造語、ラテン語音

ピエヌ、マキアージュ;化粧品、フランス語

UOMO;雑誌、イタリア語

ヘルシア;飲料、「ヘルシー」という英語音ではなく、母音で終わるラテン語型を採用している。しかし、元々「ヘルシー」という言葉が持つイメージを崩していない。

ヘルシオ;オーブン、「減る塩」=減塩=健康(ヘルシー)にかけているのかな??こちらもラテン語型を採用。

などなど、例を挙げればきりがないが、高度経済成長期の日本ではここまで見られなかった現象だ。

 また、つくば市も然り。秋葉原からつくばへ伸びる「つくばエクスプレス」はそのままひらがなが使われているが、あえてこれを略して“TX”(ティーエックス)と呼ぶと、一転響きが英語音になり“昔カッコよかった名前”に聞こえる。(またカッコいいと思う時代が来るかもしれない)

 

とはいえ、お手本は小林製薬の商品のネーミングかなと心の底では思う(*^^)v

「あら熱と~る」=お弁当の荒熱を取るジェルシート

「ケシミンクリーム」=顔のシミを消す効果を期待するクリーム

「ガスピタン」=腸内に溜まったガスによる膨張感を抑えるもの

「ナイシトール」=メタボ予防のための内臓脂肪を取る漢方処方のもの

などなど、いずれもどのような効果を期待できるか、名前を聞いただけで想像がつく。

あ、見つけた。↑「ガスピタン」て“覚えやすい音3条件”にも当てはまり、期待できる効果もすぐイメージできる。こういうのがいい。

 

 ひとつネーミングのヒントとして、自動車の名前をウォッチしていると、実は流行の潮流が見えることがある。

流行が見えるのは、名前だけでなく形もそうだ。1970年代、80年代はどのメーカーの自動車も直線的でカクカクしていた。そして最近の自動車はふっくらと丸みを帯びて、曲線的、グラマラスになラインに包まれている。では、その70年代の前の車はどうかというと、やはり現在とは違うが曲線的なデザインである。50年代のベンツとか、トヨタ車とか見ると一目瞭然。もちろん、流行の変化は自動車のデザイン界だけで起きているわけではなく、ファッションから経済まで、世間の動向と連動した流れを反映しているものだからこそ、ウォッチする価値がある。

いけない・・・話から脱線しすぎた。この話はまた別の機会に。

 

 

 

 

おっと、ちなみに弊社の看板商品(?)である「炭づつみ」は、あらゆる候補の中から弊社メンバーによる話し合いと最終的には投票によって採用された。

「炭づつみ」・・・あ段では始まっていないが、5文字、および濁点を含み、ニアピン!

「炭づつみ」の前身の商品は英語音の名を持つ。改良版の「炭づつみ」も当初は「マジックストーン」(どんな植物でもマジックをかけたかのようによく育つことから)など英語音の候補もあった。(←裏話)

 

ネーミングにまつわるエトセトラ、いろいろとグルグル思いが飛んで止まらなくなってしまったので、これにて[Ctrl]+[Alt]+[Delete](強制終了)!!!

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