花研コーヒーブレイク
花と緑の生理的調整力
2015.02.04
昨日の小欄では、日照量の少ない冬にこそ花を飾るといいかも!?気持ちに及ぼす効果が大きいのではないでしょうか、というお話を書かせていただきました。冬に気持ちがダウンする方が多いようですが、花はそのようなときに一役買うのではないかという、私の勝手な推測でした。医学的な根拠は一切ありません。
しかし、実は花や緑には生理的な調整効果があると医学的に証明されているのです。千葉大学環境健康フィールド科学センターの宮崎良文先生(医学博士)によると、切り花や観葉植物を見たときに過度のストレスがかかり緊張状態にある人はリラックスし、気持ちが鎮静しすぎてしまっている人は逆に気持ちがアップするという、調整効果があることが証明されているのです。
ここでポイントなのは、被験者に対する「アンケート結果」ではなく、「生体データで実証」されたことです。宮崎先生曰く「世界で初めての実証データ」です。
人が人になってからおよそ500万年、その歴史のほとんどにおいて森の中で生活してきました。私たちは今、都市部で生活していますがそれは人の歴史の0.0001%に過ぎません。DNAが変化するのは2-3万年単位と言われていますので、私たちのDNAはまだ都市生活に適応するような進化を遂げていません。従って、私たちは森の中で生活していたDNAのまま都市生活をしているのです。つまり、日々の都市生活で過度なストレスを感じてしまうのは、ごく必然のことであると言えます。(自覚がなくても、ストレス状態にあるのだとか)
その中でいかに私たちの体が快適と感じる環境を作り出すか。それは、やはり身の回りに花や緑を置くといいのです。生活のあらゆるシーンでそれらを目にしたり、または香りを楽しんだりすることによって、交感神経が優位な人は落着き、逆に副交感神経が優位な人はやる気が湧いたりと、生理的な調整効果が見られるのです。
※宮崎先生によると、花や緑が人工的な造形物と認識された場合には、その効果は期待できません。あくまでも、生きた植物であることが重要です。
またNK細胞(ナチュラルキラー細胞;自然免疫の主要因子のひとつ)がガン細胞を持つ人と同じレベルまで減ってしまった人も、2泊3日で森林浴ツアーに行くと、健康な人のレベルまで戻され、1か月続くという結果も発表されています。都市で働く企業戦士たちにアンケートと取り、「自分ではそれほどストレスを感じていない」という人でさえも、NK細胞が極端に少なく、病気寸前の人たちがいらっしゃるそうです。そのような「お疲れサラリーマン」(35-55歳)を対象に、森林浴の効果測定を行いました。
日頃、花の生産者さんのところに伺うと、なぜか気持ちが落ち着き、胸のツカエがとれるというのでしょうか、なんとなく血圧が安定する“感覚”はありましたが、それは自分の思い込みくらいにしか思っていませんでした。しかし、宮崎先生の研究によって、実際にその感覚は生理的に実証されているものであることが確認されたのです。
これらの実証は、私たち花き産業に従事する者としても、改めて自分たちが取り扱う商品の価値を見直す機会となりそうです。
今後膨大な医療費が見込まれる中、花や緑を生活に取り入れることは予防医療にも繋がると期待されます。