花研コーヒーブレイク
アルケミラの花はドコ!?驚ガクの真実
2024.07.11
こんにちは。みんなの花研ひろばです。
「アルケミラ」という花をご存知でしょうか。ガーデンをされる方はもちろん、日頃切花との接点がある方はご存知でしょう。
いくつかあるアルケミラの中でも、切花市場に流通するものは「アルケミラ・モリス(Alchemira mollis)」と呼ばれるものです。グリーンの星型の小花がかわいらしく、7月7日七夕放送のFMヨコハマ様の番組内でも、カスミソウとアルケミラ他を使ったアレンジメントを紹介したところでした。
花き業界の方でなければ、アルケミラの知名度は一気に下がるもしれません。しかし、日頃お世話になっている印刷会社さま(20代女性)が大田市場に見学にいらした際、あまたある仲卸通りの切花アイテムの中で一つだけ選んだのが、バラでもなく、ガーベラでもなく、なんとアルケミラだったのです。
これにはなかなか腰抜かしましたよ、ええ。もちろん彼女は花の名前を知っていたわけでもなく、アルケミラも初めて見たと言っていましたが、その可愛さに完全魅了されたようで、アルケミラのみを持ち帰られました。理由を何度聞いても「かわいいから」と。
ということで、この「かわいい」の秘密は何かと思いまして、目を凝らしてジーッと見てみました。星形に見えますが、本当に星形なのか否か、老眼世代にはもはや小さすぎて、目を離しても凝らしても形状を視認することは困難でした。1輪の花径が5-6mm程度ですな。
ということで、顕微鏡を使って撮影してみました。するとこんな感じ。
大きくしてみると驚愕の事実が見えてきました。
星形に見えたのは、実は五角形でもなく六角形でもなく八角形でした。しかも、これらはすべてガクに当たる部分。十字状になったガクが二つ重なり、合計8枚で何かのデザイン化と思うほどキレイな1輪を構成し、その小さな輪がたくさん集まり、花序を構成しているのです。これがかわいいの秘密ですな。
原産はユーラシア大陸に広く分布するバラ科の植物で、柔らかい茎を叢生する多年草です。(アルケミラ・モリスはルーマニアからギリシャ、イラン周辺が原産)
アルケミラという名前はアラビア語のalkemelych、つまりラテン語の錬金術(alchemia)に由来といいますから、なかなか興味深いですね。そういえば、英語でも錬金術のことをalchemy(アルケミー)といいます。まさかalchemyとアルケミラが語源で繋がるとはね。
アルケミラの葉には細い毛が密集していて、毛が水滴を捕らえるとその粒がまるでダイヤモンドか水銀のように見えることからこの名前が付いたようです。切花で流通するときには葉はほとんどついていませんが、ガーデンをされる方はよくご存じかと思います。柔らかくてビロウドのような葉をしていますね。
種小名のmollisは「柔らかい」を意味し、その葉の柔らかさを的確に表現していると言えるでしょう。
また、葉にはタンニンが含まれているため、収斂作用と止血作用があると薬草として利用されたようです。
あまり目立つ花ではないかもしれませんが、その背景にあるストーリーも充実して、さらには見た目もかわいいと、地味に人気の花と言えるかもしれません。
アルケミラの花、花と思っていたら部分が実はガクだったなんて、ガク(咢)だけに驚愕の真実ではありませんか・・・そうでもないか。
ま、いずれにしてもごきげんよう。