花研コーヒーブレイク
天然皮革は悪ものなのか
2024.02.05
こんにちは。みんなの花研ひろばです。
1月某日の日経新聞の全面広告。広告主は一般社団法人日本皮革産業連合会。
ビーガンレザーにレザーフリーなどと盛んに叫ばれていますが(あるいは環境負荷低減の姿勢をPRする企業マーケティングに使われていますが)、いつから天然皮革商品が社会悪として見られるようになったのかって話。
広告の内容によると、技術革新によって環境に良い素材が生まれるのは喜ばしいことですが、天然皮革を悪者にするのは少し違うんじゃないかと。というのも、天然皮革は食用で人がいただいた牛ちゃんや豚ちゃんの命を、余すことなく活用するために製品化しているのであって、皮革製品のために動物の命を奪うものではありません。たとえ皮革製品がなくなったとしても、私たちが牛肉や豚肉をやめない限りは動物愛護にはつながらないでしょ、別の何かに置き換えたところで環境負荷低減につながるとは限らないんですよってことを、とても上手に伝えていらっしゃいます。皮革製品を悪者にしないで、いま一度ちゃんと向き合ってくださいねと。
例えば、バトミントンのシャトルには水鳥の羽が使われていますが、それは食用で使われた水鳥の羽なのだそうです。バトミントンのシャトルだけ思えば、レジャー用のプラスチック製のシャトルの方が環境負荷が高いと捉えることもできるかもしれせん。
典型的なのは、スカンジナビアの中でも北極圏ほどの最北端に住むサーミ(Sami)という先住民です。トナカイとともに極寒の自然を生き抜く彼らにとって、トナカイはかけがいのない生活のパートナーです。移動の手段としてトナカイを利用するのはもちろんのこと、食用としてその命をいただき、暖をとるための住居用の敷布にするばかりではなく、オーバーコート、帽子、ブーツなどをトナカイの毛皮で、さらには刃物などの道具や小物はトナカイの角で作ります。まさにトナカイの命とともに生きているのです。(現地に行くと、サーミ博物館なるものがあり、理解を深めることができます)
皮革製品も、サーミ族やバドミントンのシャトルのように、動物の命をいただいたら、余すことなく活用するという点において考えは同じでしょうということですね。
あるいは割り箸ももはや国産はすべて間伐材から作られていて、捨てるものを再利用していると聞きます。割り箸を創るために木を伐採しているわけではないということ。それを知っていれば国産割り箸は森林の破壊者ではないことを理解できます。
天然皮革製品が悪ものかどうかって話、花き業界としても縁遠いこととも思えないのです。花や野菜など植物の命をいただいて、それを国民のみなさまにお届けして生活の糧にしていただいているわけですから、これが何かやり玉に挙げられたときにはなかなか究極の話になってきてしまいます。とはいえ、皮革産業にとってもそれに近いアンチの風を受けて広告を出されたのだろうと思います。この度の全面広告は皮革産業連合会からのメッセージがよく伝わりましたし、自分たちの産業についてもこのような社会的リスクについて考えさせられるものでした。
ともあれ今日はこの辺で。
関東地方では大田市場周辺でも積雪予報が出ています。移動の際は十分ご注意くださいませ。
あ、最後にちょっとだけ。
JA全中とNHKからこの度日本農業賞が発表されました。
ご受賞のみなさま、誠おめでとうございます!
それではみなさま、ごきげんよう。