花研コーヒーブレイク
それでもユリはよく香る
2023.11.28
こんにちは。みんなの花研ひろばです。
今朝、事務所のある一角で良い香りが漂っていました。紅茶の香りです。しかも、マリアージュフレールのマルコポーロと思しき香りでした。違うかもしれませんが。いずれにしてもだれかが持参して、きっと香り高くおいしい紅茶を飲んでいたのでしょう。
さて、香りと言えば、今、夕方から夜にかけて大田花き前の通路を歩くととてもいいユリの香りがします。ユリは虫媒花。ユリの花粉を媒介してくれる虫の習性に合わせて、とりわけ夜に強く香りを放つようで、通路を歩いていても、昼よりは暗くなってからの方が強香を感じます。レストランなどでユリの香りがお食事の際に気になるというようことも聞きますが、ディナーの時間帯にユリを飾れば、そうなるのはもっともなのです。
食事の時に芳香が強すぎると抵抗がある方もいらっしゃると思いますが、自宅のリビングや洗面所、商業施設などの通路や出入り口などであれば、ユリの香りが漂っていてもポジティブに捉える人が多くなるのではないでしょうか。以前、ある病院を取材した時に、月1で四国から千葉まで治療にいらっしゃる患者さんは、自分の気持ちを上げるために、オリエンタルユリの香りがお好きで、自分が病室に入る前にオリエンタルユリを部屋に飾っておくと言っていました。治療のつらさを少しでも緩和するその人なりの手段なのでしょう。
さて、記憶と香りの関係性はよく知られています。香りについては脳の偏桃体で感情が加えられ海馬で記憶され、一体のものとして情報が処理され、このことによって匂いが感情とともに記憶されるのだそうです。古い記憶も、香りの引き出しとともに呼び出されるのは、記録される場所が同じだからということのようです。雨が降り始めの土埃が立つ匂いは、こどものころから記憶の深い所に焼き付いています。視覚や触覚で雨を認識できなくても、土埃がたつ匂いで雨が降っていることに気づきますし、こどものころの経験が一緒によみがえってきます。
また、脳(つまり自分)が喜ぶような香りをかぐと、脳の刺激になってボケ防止になるのだそうです。この効能を考えれば、計算ドリルなどよりも花の香りをかいだ方がよいようです。詳細は『ボケたくなければバラの香りをかぎなさい』(天野惠市氏著、ワニブックス)をご参照ください。
「香りという無限の組み合わせを感じる嗅覚は、動物をそれ自体で喜ばせるものである」と言ったのはレオナルド・ダ・ヴィンチと、本の著者天野惠市先生はおっしゃっています。そのくらい人にとっても香りが大切な存在であり、脳の機能にも大きな影響を及ぼすと説いています。
また人が持つ5つの感覚の中で、嗅覚だけは老化に抗いトレーニングによってその機能を保つことができるといいます。実際にサルバトーレ・ダリは「五感の中で、嗅覚こそが永遠を伝える最良の感覚であることは疑いの余地がない」と言っています。ダリは感覚的に言ったようですが、もはやこのことは科学的に裏打ちされているようです。
実は、鼻が利きすぎるとネガティブな思いをすることも無きにしも非ずですが、もう少し香りを意識して生活を楽しんでみたいと思います。
それではみなさま、ごきげんよう。