花研コーヒーブレイク
【温故知新】キクと相性のいい花
2023.11.14
こんにちは。みんなの花研ひろばです。
先日、大田区の「こども科学教室」という小中学生親子を対象とした授業の講師依頼があり対応いたしました。花を使ったちょっとした科学教室で、主催は大田区教育委員会です。
毎年ご依頼いただき行っている授業で、毎回ほぼ同じようなことをやっているのですが、あまりにも同じ内容ですと参加者は変わるのでよくても、自分自身が飽きてくるので少しずつ変更を加えています。
今回の授業では植物の導管のしくみについて学ぶため、色水を吸わせて花びらの染まり具合をみんなに確かめてもらう企画にしました。ちょうどよいシーズンを迎えているキクを用い、せっかくなのでその染めたキクでフラワーアレンジを作ってもらうという主旨です。
写真のとおり、色水を白いアナスタシアに二色吸わせて半分ずつ染め分けられた菊を作ります。茎を半分に割って左を赤の染色液に、右を青の染色液の入った容器に浸けると、1時間ぐらいでばっちりと染まります。カラーリングはあえてわざとらしいほど対比が出るようにしています。科学実験なので芸術性よりも分かりやすさを優先しているのです。
ところで、その染めたキクの隣にある白っぽいもこもこした花はナニと思われますか。
正解はコットンフラワーです。
今回たまたまコットンフラワーを使用したのですが、キクの歴史説明をしているうちに思い出しました。現在私たちが観賞しているキクは、中国から日本に渡ってきた当時の外来種で、平安時代初期に入ってきたのではないかと考えられています。当時の最新ファッションのような位置付け。現在の皇室の紋章がキクになったのも、大陸から伝わった当時のおしゃれなキクを後鳥羽上皇がいたくお気に入りで、自分の紋にキクを使ったことがきっかけと言われます。キクを使った行事や文化とともに伝わりました。
そのうちの一つが重陽の節句です。9月9日に、キクの上に湿らせた綿を一晩ふわりと載せます。これを「着せ綿(きせわた)」というそうですが、この綿にキクの香りが移り、その綿で体をぬぐうと健康長寿となるという風習がありますね。現代ではほとんど見かけませんが、昔の画像で見ることができます。
ということは、キクを飾るときにコットンフラワーも飾ったらいいのではないか(!)とナイスすぎるアイデアに気が付きました。今回、キクと一緒にコットンフラワーを使ったのは偶然でしたが、実はその昔から文化的にも繋がっていて相性がいいのです。
このように古いところからの文化を現代のアレンジに生かすのも悪くないと思います。
ではワタ、もとい、ではまた。
ごきげんよう。
『フラワービジネスノート2024』はこちら。