花研コーヒーブレイク
驚きの染めファレノ
2023.07.03
こんにちは。みんなの花研ひろばです。
6月26日(月)には、NHKラジオでは弊社内藤より、切花のファレノ(正式にはファレノプシス、コチョウラン)を紹介いたしました。
ファレノは取扱数量がここ10年で数量にして140%ほど伸びている(※東京都中央卸売市場)花形品目の一つです。
ラジオでは、ミディ系のヌーディカラーなどについてご紹介させていただきましたが、大輪系は色バリエーションが限られているので、トレンドにキャッチアップするためか、最近では大輪白がヌーディーカラーに染められたものを見かけるようになりました。
切花ファレノの染めの方法は大きく2つ。
染液を吸わせる方法とカラースプレーを噴霧する方法です。人で言えば、着色液を吸わせるのが、美肌のためにコラーゲン飲みましょとかビタミンCのサプリを摂りましょみたいなもので、スプレータイプがファンデーションを塗りましょうみたいなものでしょうか。つまり、サプリかファンデか。個人的感覚の例えにすぎませんが。
さて、サプリパターンは、収穫したファレノを水揚げを兼ねながら一定時間染液に浸けます。すると花弁の脈に沿って徐々に染まっていくことで脈の美しさが感じられます。それがこちら。仲卸通りで撮影しました。
一方、ファンデパターンは、スプレーで塗装するようなイメージで作るのだろうと思います。
ファンデパターンで染めたのであろうファレノが仲卸通りに並んでいて、あまりにも美しくて思わず足を留めて、暫し見とれてしまいました。
淡い水色からピンクや黄色への自然なグラデーションなど優しい風合いでとても素敵ですね。今までに見たことのないファレノです。
あまりにもきれいで、自分でもやってみたくなり、白いファレノとスプレー(今回は紫色をチョイス!)を買ってきて、どんなもんだろうと実際にやってみました。
やってみましたが、難しい。恐る恐るスプレーを噴霧すると、躊躇した指の感覚がスプレーの魂にも伝わるのか、ぼたぼたと液が花弁に落ちてしまいます。「躊躇してんならそこまでだそ」とスプレーに心を読まれたような気持ちです。
また、近くから噴霧した場合も、雨垂れの跡のようになってしまいました。
何度かやるうちに、自分の中でコツを悟りました。少し離れた所から思い切って噴霧することです。スプレーの細かい粒子が花弁に付着するので、ふんわりした色味を出すことができます。
この真っ白がスプレーで紫のコチョウランに↓
とはいえ、仲卸さんで販売されていたような、ふんわり薄づきのきれいなグラデーションにはなりません。
色を吸うせいなのか、スプレーのメーカーによっても違うのか、乾くと一段トーンも暗くなり、スプレー缶の色そのままがファレノに定着するわけではないようです。
スプレーを噴霧する力加減や色を調整して花弁一枚一枚を仕上げるのはさすがプロの技だと感じました。店頭に並び人の目を引き付けるまでの完成度に仕上げるには、どれほどの試行錯誤があったのか計り知れません。
ファレノは枝垂れた茎に5-6輪の花をつけているので、ほんの1-2本でもかなりの存在感があります。他の花より少しお値段は張るかもしれませんが、その分日持ちもするので、よく花を購入される方にとっては実はコスパも良いのではないでしょうか。
ファレノだけでなく、市場に並ぶ染め花には、生産者さんの並々ならぬ試行錯誤から生み出された独自のノウハウが詰まっているように思います。美しい染めの花は、それだけ高い価値のあるものと自分でやってみて気づかされました。染めはこれまでになかった色を作り出すことができ、花の印象を大きく変えるので新たな提案にもつながるかもしれません。
それではみなさんごきげんよう。