OPERATIONAL PERFORMANCE花研コーヒーブレイク

金田一春彦の日本語

2022.11.03

こんにちは。みんなの花研ひろばです。

「金田一少年の事件簿」ではなく、金田一春彦の『日本語』です。岩波新書。もう本文の紙が茶褐色に変色して、表紙の縁も幾度となく補強された様子が窺え、「古い本だから大切に扱ってね」マークのしおりが挟んである本を図書館から借りてきました。大変興味深く拝読しております。

 

内容の一部ですが、例えば自然を表す日本語で語彙が少ないのは鉱物名、ほかにも天体名や家畜に関することなど。重要なはずのキン・ギン・ドウ・テツでさえも漢語を使っているという金田一先生のご指摘。それだけ馴染みにがないということのようです。

一方、鉱物に反して語彙が豊富なのは植物だと。樹木の名前で行けば、マツ、スギ、マキ、モミ、ツガ、クリ、シイ・・・・・・・・・とおびただしいほどの木があり、草の名前も然り。とりわけ葉の長い草の名前が多く、タケ、ササ、シノ、アシ、オギ、カヤ、ススキ、コモ、チ、スゲ、イ、ガマ・・・・・言われてみれば、これほど細かく言い分けている言語はほかにそう多くないように思います。(もちろん、そんなにたくさんの言語を学んだわけではありませんが、想像に難くないかと)

そういえば、ご存知の通りシャクヤクとボタンは私たちから見れば明らかに別の植物ですが、英語ではpeonyと一緒くたですね。

 

植物に関する表現が多様であることは言われてみればその通り、例えばサクラの観賞に関する語彙がいかに多いか、サクラフブキ、ヨザクラ、ハザクラ、ハナイカダ、ハナアカリ・・・これだけでも日本人がいかに植物に対する造形が深かったかを垣間見ることができます。

また、寺田寅彦氏は、“「エダブリ」という単語は西洋語には訳せまい”と言ったとあります。

 

花き産業は数字で切り取ってしまえば社会経済の中では決して大きな産業には分類されないかもしれません。しかし、生活への浸透度、国民への広い普及度、日本人との歴史上のかかわり、文化としての定着度などを測るメジャーがもしあるとすれば、確実に重要な位置を占めていることと思います。

 

話は変わりますが、このたび旭日小綬章を受章されたサカタのタネの坂田宏社長は、本日付けの日本農業新聞のコメントで次のように談話を発表されています。

(以下抜粋)

「当社の使命は、新たな価値ある花や野菜の品種を開発し、人々の生活や文化の向上に貢献すること。花は心の栄養、野菜は体の栄養というメッセージの下、これからも種苗を通じて、サステナブルな社会の実現に貢献し、世界中に笑顔と健康を届けていく。」

 

数字でいけば、どんなに頑張っても取り扱い規模から花は野菜を上回ることはないでしょう。それはサカタのタネさんにおける取り扱い金額においてもそうに違いありません。それでも尚、花を先に言及されているところにサカタのタネさんの懐の深さを感じます。表現の順番を変えたことでマーケットサイズでは付属品くらいに思われてしまう花とのバランスを取られたのか、いずれにしても日本人と植物との関係を重要視されていることが伝わる談話と感じました。

 

坂田社長の叙勲ご受章、心よりお慶び申し上げます。

 

それではみなさま、ごきげんよう。

一応最後に、フラワービジネスノート2023のご紹介。こちらからどうぞ。

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