花研コーヒーブレイク
失われた30年と「日本は後進国ですよね」の衝撃
2022.10.25
こんにちは。みんなの花研ひろばです。
いまさらですが、「失われた10年」といわれた日本経済はあっという間に「失われた20年」になり、ほぼ「失われた30年」になりました。それでも尚、日本は2位の中国とは大差をつけられてはありますが辛うじて3位であることから、まだなんとなく先進資本主義国との認識が根強いように思います。
しかし実際には、主要7カ国のうち日本だけGDPの成長が見られず、現金給与額も1997年をピークに一度下がったまま、消費税は上がっても給与額は長い間上がっていません。この状況は、グラフとともに講演にお招きいただいたときにご紹介している通りです。もう何年も前からこの日本経済の状況をお話ししていますが、最近ニュースで(私にとっては)さらに衝撃的な角度から日本経済の低迷が報道されていました。
・「出稼ぎ」に海外に行く日本人
美容師さんなど専門職の方々は海外に行った途端に給与が3倍に。給与も3倍の代わりに生活費も3倍ですが、手元に残る現金も3倍。とても稼げると。
日本は東南アジア諸国の人たちが出稼ぎにくる場所かと思っていたら、もはや日本人が出稼ぎに別の国に行くという時代であった。
・海外で活躍するある寿司職人さん
寿司職人の勉強をして入社した会社では、握らせてももらえず海外に脱出。即日握らせてもらい、給与も3倍(くらいだったかな)。ついには独立して、現在の年収は7,000-9,000万円相当(年商じゃありませんよ)だとか。
・ある女性はインタビューを受け「日本は後進国ですよね」と。
この女性の発言についてはどのような流れだったか詳細忘れましたが、この言葉を裏付けるような新聞のコラムを見つけました。
先週の水曜日から連載が始まった日経新聞「やさしい経済学」に連載中の大阪大学堀井先生のコラム「経済が成長する条件」。わかりやすく書かれていて、とても勉強になります。そのコラムによると、米国はGDPが19世紀の産業革命以降平均約2%で成長。その一方で、長年成長できずに取り残され、いつの間にか世界最貧国になっているアフリカ諸国、アルゼンチンは30年頃まで急速に成長して先進国となったが、その後は低成長にあえいでいる。つまり豊かな国と貧しい国の格差は順調に成長してきたかどうかの結果であると。
さて、この話を聞いて30年近く成長が止まっている日本経済をどう評価しますか。私にはインタビューの女性のコメントが妙に刺さります。日経のコラムにある通り、経済は成長することが当たり前ではありません。もはや好景気の日本ではなく、このままでは日本経済は成長を取り戻すことができないのです。
つまり花き産業も生産者さんが減少しているように、あるいは一人当たりの花き類支出金額の減少に歯止めがかからないように(総務省データ)、単年の変化があったとしても、大きな波として長期的に回復するのは極めて難しい状況にあるいうことかと思いました。
ちなみに、切花の国内産出額はピークの1996年対比で2021年は56.4%(フラワービジネスノート2023Data9参照)、2021年の1人あたりの切花支出金額はピークの1997年対比で57.4%(税抜き換算)です。これは1985年ころと同じ水準です。1985年当時は消費は上り調子にありましたが、現在は下っているので、あと数年もすれば70年代レベルになることは容易に想像されます。
このような状況では生産者さんや小売店さん、もちろん中間流通を含めたすべての従事者が大変な思いをするのは必然となってしまいます。
ではどうすれば長期成長を実現できるかというと、そのコラムによると「気合い」・・・ではなく、「技術進歩」なのだと。技術進歩で1人当たりの生産性も上がり、資本も増加すると。
実はこの10月、その技術進歩と日本経済の低迷についてスポーツを通じて肌で感じる経験をすることになりました。一度はプロスポーツの試合観戦をした時。スポンサー企業さんの手前詳細は省きます。もう一度は某区のスポーツ試合の運営側で手伝いをした時。昭和の時代と変わらないあまりにもアナログなやり方に驚かされました。技術進歩が見られず、混乱×混乱で現場は苦しい思いをするのです。残るのは疲労だけ。生産性が上がるはずもありません。しかしこれも同時に、日本経済の低迷とリンクしているのだと得心がいったところです。
「日本は後進国ですよね」の衝撃が頭から離れません。この認識から再出発して、技術を使い、効率よく仕事を進めること、生産性を上げることを優先的に考えなければならないわけですね。それをしなければ成長はないと心に刻みたいと思います。大変な業界だからこそ、なおさら技術の活用と進歩が最優先されることが求められていると思った10月になりました。そんな10月も残すところあと1週間です。
それではみなさま、ごきげんよう。
※上記、私は経済の専門家ではないので、誤認識も多分に含んでいると思います。あるいは大なる主観もございますので、単なる落書き版と思ってご放念いただければと思います。
フラワービジネスノート2023のData9には「花き出荷量推移」が掲載されています。
1995年から5年刻みでどのくらい減少したか、また切花、鉢物、花壇苗類、それらの総合、それぞれに、ピーク時を100とした場合に今どのくらい減少しているか、見やすいグラフでご紹介しています。