花研コーヒーブレイク
吉田兼好 秋の草花を愛でる ~歯に衣着せぬバージョン~
2020.10.07
こんにちは。ボンジュール内藤です。
秋の草花が趣を増し、味わい深く美しい季節になりました。
キク、ススキ、ワレモコウ、リンドウ、フジバカマ、ケイトウ、実物(みもの)、紅葉した枝物・・・・などなど、花き市場の仲卸通りも歩いていて味わい深く、「いとをかし」な感じです。
兼好法師として教科書に登場する詩人吉田兼好は、徒然草の第百三十九段で以下のように言っています。
・・・以下引用・・・
◎現代語訳 (こちらのサイトから拝借いたしました)
「家に植えたい木は、松と桜。五葉の松も良い。桜の花は一重が良い。
『いにしえの奈良の都の八重桜』は、最近、世間に増え過ぎた。
吉野山、平安京の桜は、みな一重である。八重桜は邪道で、うねうねとねじ曲がった花を咲かせる。
わざわざ庭に植えることもないだろう。遅咲きの桜も、咲き間違えたようで白ける。
毛虫まみれで花を咲かせるのも気味が悪い。梅は白とピンクが良い。
一重の花が足早に咲き、追って八重咲きの花がルージュを引くように咲くのは嬉しい。
遅咲きの梅は、桜のシーズンに重なり、適当にあしらわれ、桜に圧倒されて、情けなく悲惨である。
『一重の梅が、最初に咲いて、最初に散っていくのは、見ていて潔く気持ちがよい』と、藤原定家が軒先に植えていた。
今でも定家の家の南に二本生えている。それから、柳の木も乙なものだ。
初春の楓の若葉は、どんな花や紅葉にも負けないほど煌めいている。橘や桂といった木は年代物で大きいのが良い。
草は、ヤマブキ・フジ・カキツバタ・ナデシコ。池に浮かぶのはハス。
秋の草なら、オギ(荻)・ススキ・キキョウ・ハギ・オミナエシ・フジバカマ・シオン・ワレモコウ・カルカヤ・リンドウ・シラギク、そして黄色いキク。
ツタ・クズ・アサガオ。どれも、伸びきらず、塀に絡まらない方が良い。
これ以外の植物で、天然記念物や、外来種風の名前の物や、見たこともない花は、まるで愛でる気にもならない。
どんな物でも、珍品で、入手困難な物は、頭の悪い人がコレクションして喜ぶ物である。そんな物は、無いほうが良い。」
・・・引用終了・・・
このなんとも最後の兼好らしい歯に衣着せぬ言いっぷりがいいですね^^;
「見たこともない花はまるで愛でる気にもならない」(!)というのが潔いですね。今の花き市場ではそうはいきません。みなさまが見たことない花を紹介して、サプライズをお届けするのもあはれの世界ですね。しかし、荻やクズ以外は、ほぼ今の市場で秋らしさを演出している花材とあまり変わらないのもまた乙なりと思います。
兼好がいいと良いといっている秋の商材で現在市場流通している切花類(・・・の一部)。
フジバカマ ナデシコ リンドウ キク
ワレモコウ キキョウ
ちなみに原文はこちら。
◎原文
家にありたき木は、松・桜。松は、五葉(ごえふ)もよし。花は、一重なる、よし。
八重桜は、奈良の都にのみありけるを、この比ぞ、世に多く成り侍(はべ)るなる。吉野の花、左近の桜、皆、一重にてこそあれ。
八重桜は異様(ことやう)のものなり。いとこちたく、ねぢけたり。植ゑずともありなん。遅桜(おそざくら)またすさまじ。虫の附きたるもむつかし。
梅は、白き・薄紅梅(うすこうばい)。一重なるが疾(と)く咲きたるも、重なりたる紅梅の匂ひめでたきも、皆をかし。
遅き梅は、桜に咲き合ひて、覚え劣り、気圧(けお)されて、枝に萎(しぼ)みつきたる、心うし。
「一重なるが、まづ咲きて、散りたるは、心疾く、をかし」とて、京極入道中納言は、なほ、一重梅をなん、軒近く植ゑられたりける。
京極の屋の南向きに、今も二本(ふたもと)侍るめり。柳、またをかし。卯月ばかりの若楓(わかかへで)、すべて、万(よろづ)の花・紅葉にもまさりてめでたきものなり。
橘(たちばな)・桂(かつら)、いづれも、木はもの古(ふ)り、大きなる、よし。
草は、山吹・藤・杜若・撫子。池には、蓮。
秋の草は、荻・薄(すすき)・桔梗・萩・女郎花(おみなえし)・藤袴・紫苑(しをに)・吾木香(われもかう)・刈萱(かるかや)・竜胆(りんだう)・菊。黄菊も。
蔦・葛・朝顔。いづれも、いと高からず、さゝやかなる、墻(かき)に繁からぬ、よし。
この外の、世に稀なるもの、唐めきたる名の聞きにくゝ、花も見馴れぬなど、いとなつかしからず。
大方(おほかた)、何も珍らしく、ありがたき物は、よからぬ人のもて興(きよう)ずる物なり。さやうのもの、なくてありなん。
ということで、リンドウをはじめとし、フジバカマやワレモコウなど秋の草花を生産される大木伸一さま(群馬県)を産地ウンチク探検隊に掲載いたしました。(記事はこちら)
よろしければご一読いただけますと幸いです。
フジバカマ畑に遊びに来たアサギマダラ↓(ウンチクの記事内でご紹介しています)
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