花研コーヒーブレイク
断層
2017.05.30
6月3日、映画「花戦さ」公開に因み、いけばな池坊正教授の田中翠美先生と有楽町の無印良品様でイベントを開催いたします。午前中はトークショー、午後はいけばなワークショップです。
午前中のトークショーで主催者様からいただいたいリクエストは「花き流通のしくみ」について。
花き流通のしくみについてお話しすることはたくさんあったとしても、生活者のみなさまからしたら比較的地味なこのトピックスのうち、どのあたりのポイントなら興味を持って90分も聞いていただけるか頭を悩ませました。業界の方に向けた話の焦点とは異なってくるでしょう。
対談相手の田中先生とのお打合せの中で、自分が思う聞き手がご興味を持ってくださるポイントと、生活者・消費者に近い方ご興味を持ってくださるポイントに大きな乖離があることがわかり、ショックを受けつつも、良い勉強をさせていただいたと思っています。
私が勝手に「この話は面白くないでしょうね」と思いつつもご提案した内容が、「その話おもしろーい!ぜひご紹介してください」なんて言われて、拍子抜けしてしまうというか、目が点になるほど驚いてしまいました。つまり全く勉強不足だということですね。
一方で、田中先生が驚かれたこともありました。
ワークショップで「オクラレルカ」(オクロレウカと呼ばれる場合もあります)というアイリス属の葉を使用されるのですが、一般的にはオクラレルカというアイテムに生活者・消費者にはあまりなじみがありません。「菖蒲(の花)の葉」といえばまだいいかもしれませんが「オクラレルカ」というカタカナの羅列自体に触れる機会は極めて少ないでしょう。このことに驚かれていたのです。
実際花研手帳のバックナンバーに「オコラレルカ、オクラレルカ、オゴラレルカ、タカラレルカ、このうち花き市場に流通するものはどれ?」というクイズを記載したことがあります。花き業界人6人の集まりでこのクイズを読み上げたとき、なんと全員が不正解でした。業界の人でさえもこの反応ですから、生活者のみなさまにとればなおさらでしょう。
自戒の念を込めていえば、業界に長いこといると“常識”というものがずれてしまいがちです。長い時間をかけて少しずつ地層や岩盤がずれて断層が形成されるイメージに近いでしょうか。断層のずれを認識できないままお話を続けると、聞いている方も面白くありませんし、お話している方も独りよがりになりかねません。
お話させていただくときはそれぞれのケースに応じた閾値をよく検討して臨みたいと思います。
6月3日のイベント詳細はこちら↓
有楽町にお越しのついでがございましたら、ぜひお立ち寄りくださいませ♪