花研コーヒーブレイク
生花店の香りは変わったか? その②
2016.08.12
昨日の続きです。
ハナセンに毎年ご家族てたくさんご投句いただくHさまから生花店から香りがしなくなったような気がするというご質問をいただきました。
では、香りがしない生花が増えたのか、ということですが、弊社では以下のように考えております。
理由その① 生花店の出店形態の変化 ~空間の開放性~
現在の生花店は、お客様に自由に出入りしたり、ご覧いただきやすいように、入口を開け放していたり、あるいは商業施設の中などのオープンスペースにある場合が多くなってきています。
そこで芳香が狭い空間に閉じ込められることなく放出され、香りを感じにくくなっているということが考えられます。
生花店のあり方は変化しています。「敷居が高い」とか、「一度入ったら何も買わずに出にくい」などのお客様の声を反映し
開放された空間に出店する傾向が一つ関係しているような気がします。
理由その② 店頭品目の変化
昔の生花店の香りの元は、主にキクとユリであったと分析しています。特に大量のキクの花、茎、葉から放出される香りは、そのほかのユリやスイートピー、カーネーションなどの香りと混じり、生花店独特の香りを形成していたものと思われます。
しかし、昨今では、世界でも類を見ないほど日本の花マーケットは品目が多くなり生花店の取扱品目も増えました。必然的に全体の中でキクやユリの割合が昔より減少していることも理由の一つとして挙げられます。
恐らく、現在の生花店でも、空間を閉じ込めれば、しっかりと香りを感じることはできると思いますが、その香りはまた昔の生花店とは異なったものであることでしょう。
香りを持つ切り花を考えれば、昔よりはるかに多くの品目が流通していることもまた事実です。
一方、消臭に向けた取り組みが行われている品目もあります。一部のユリやカスミソウなどです。行政や生産地が一部の商品を消臭処理した上で出荷するという取組を行っています。
ちなみにクチナシの花の香りは、1日のうちの時間帯で強度が変わります。
朝よりも夕方以降の方が強く香るので、午前中に香りを嗅いだとすると、多少物足りなさを感じることがあるかもしれません。
③おまけ ~プルースト現象~
「プルースト現象」を存知の方も多いと思いますが、ある特定の香りから関連付けられた過去の記憶が呼び起されることです。香りの記憶は脳の深いところにインプットされるために、その香りと結びつけられた体験は、潜在的な記憶としていつまでも脳に刻まれるといいます。
従って、昔覚えた香りをふとしたタイミングで体験すると、思わぬ記憶が脳の深いところから引き出されて思い出されることがあるわけです。
花研ブロガー2号自身も、昔の生花店の香りを感知すると、その香りに関連付けられた記憶が断片的にですが、ダイジェスト写真集のように思い起こされます。
この度ご質問くださったHさまが昔の香りがする生花店をつい探してしまうというのもよくわかりますし、他にもそういう方はいらっしゃるかもしれませんね。クローズされた空間で店舗運営されている生花店さまで、キクやユリなどの花をい比較的多く置いていらっしゃるところでしたら、そのような香りに出合える可能性があるかもしれません。
以上、生花店の香りの変化に関する考察でした。
みなさま、良い週末をお過ごしくださいませ。