花研コーヒーブレイク
花祭壇
2016.07.05
当社では月刊「仏事」(鎌倉新書)という雑誌を購読しています。葬儀や仏需要、お墓事情などにまつわる最新情報が幅広く、且つ具体的にカバーされていて、大変興味深い内容です。
この度届いた7月号を開くと、冒頭に紹介されていたのは2つの花祭壇でした。
ひとつは“世界のニナガワ”こと演出家の蜷川幸雄さんのお別れ会。
国内外で高い評価を得て、文化功労章や文化勲章をご受章された蜷川さんは、日本を代表する演出家であることを象徴してか、日の丸を意識したのであろう(ブロガー2号の憶測)花祭壇が作られていました。
シロギクをメインに使い日本の山河が描かれ、遺影の周りは真紅のバラで丸く彩られました。日の丸の太陽になぞらえ、今後の演劇界を太陽のように天国から照らし続けてほしいという思いが込められているようにも思います。
もう一つは、元通産大臣、元自民党総務会長、富士急行株式会社取締役社主・堀内光雄さんのお別れ会。
花祭壇には、堀内さんの故郷山梨にも裾野を広げ、その社名にも使われた日本の象徴富士山が描かれました。
富士山はキクやカーネーションで描いています。青が大変鮮やかで、きれいなグラデーションに仕上がっていますが、青く染めたカーネーションで作られているように見えます。遺影の周りはコチョウランで柔らかく華やかに。また、祭壇の後方には、コチョウランで象られた雲やドウダンツツジで山々の緑が表現されています。
故人を偲ぶ展示コーナーは、白とピンクで温かく装飾されていました。ピンクはカトレアやカーネーション、バラなど、白はオリエンタルユリ、スプレーギク、カスミソウ、アルストロメリア等が使われていました。
お別れ会には安倍首相も手を合わせにいらっしゃったようです。(右上の写真)
ご両名の花祭壇ともに大変立派で高い技術のものであることは、誰の目にも明らかでしょう。花祭壇は専門の技能を持つ方が、紙1枚の指示書を元に、あっという間にモノトーンな平面に描かれた図を、色のある立体空間に再現してしまうのです。
一輪一輪個体差のある花材の中から、開花状態や輪サイズ、色などを見ながら選び、指示書に忠実に再現していきます。時間との勝負ですが、慌てず、しかし迅速に、且つ正確に花を挿していきます。まさに、生花で描かれた立体絵画とでもいいましょうか。写真を拝見するに、一糸乱れぬ見事な左右対称な芸術は、静寂を生み出し、厳粛な空気をコーディネートする役割を果たしていることでしょう。
葬儀やお別れ会は、どんなに著名な方でもなかなか海外のメディアに触れることはないかもしれませんが、恐らく海外の方がこのれらの立派な花祭壇をご覧になったら、感嘆することでしょう。もしかすると、この技術も日本が世界の誇れるもののひとつかもしれません。